災害は必ず来る! – その時何が起きるのか?
「自然災害で電気と水道、都市ガスに被害に出たら、一般にどの順番で復旧するでしょうか?」
一般に、ライフラインの復旧にどれくらいの時間がかかるのか?
以下で「近年の主な自然災害によるインフラへの被害状況」(出典:農林水産省⑻)を紹介しましたが、自然災害からの復旧はおおよそ電気、ガス、水道の順で復旧が進むようです。
東日本大震災では電気が約3か月、ガスが約2カ月、水道が約6か月半で復旧が完了しています。しかし、前述したように東日本大震災の最大避難者数は47万人に対し、南海トラフおよび首都直下地震で想定される避難者数はそれぞれ430万人と720万人です。被災する規模は前者で9倍以上、後者はなんと15倍以上ですし、首都直下では液状化の被害が想定されますから東日本大震災以上に復旧まで時間がかかると想定すべきでしょう。
インフラ被害でとくに注目すべきはガスと水道の復旧完了までの時間です。地震による災害では、地中に配管がある都市ガスの被害はもちろんLPガスでも配管が壊れるケースもあるでしょう。つまり、復旧するまで温かいものを食べることができません。
水道も同じで、完全復旧には相当な時間がかかることを覚悟する必要がありそうです。
災害時における食の問題
せっかくの備蓄食料も津波や水害で流されてしまうケースもあります。そこで、備蓄食料や水がないという前提で、災害時における食の問題を考えてみましょう。
まず、消防庁の調査した全国の行政による食料備蓄は、備蓄量が最も多いのは乾パンで約1,230万食、次いで缶詰が485万食、インスタント麺が130万食でした。₄₎
繰り返しになりますが、首都直下地震の避難者数の想定は720万人ですから、1日3食として勘案すると、全国の備蓄食料をかき集めても絶対量が圧倒的に不足していることがわかります。また、大規模な水害や地震が起きると現実には次のようなフェイズで食の問題が起こります。
【最初のステージ】概ね災害発生後数日間
電気やガス、水道などのライフラインが使用できなくなったり家屋が倒壊、損傷したりして自宅で食事をとることができなくなります。また、道路の寸断により食料が手に入らなくなります。そのため、このフェイズで食べることができるのは調理がいらない乾パンや缶詰などの食料に限られます。
東日本大震災の記憶の通り、震災では多くの建物が崩壊し、火災が同時多発的に発生します。停電や道路のガレキも復旧に1週間以上かかるでしょう。したがって、この間は支援物資も届きません。つまり、公助は期待できません。
【次のステージ】数日から数週間
一般に、1週間程度経てば支援物資が届けられ、湯が使用できるようになります。最低限の温かい食事がとれるようになります。
【最終ステージ】数週間から数カ月
ライフラインが復旧し、通常の調理ができるようになっています。ただし、これは家の被害がないケースもしくは仮設住宅などに入居できたケースです。
残念ながら、多くの方々が避難所での生活となるでしょう。その際の食事は、届けられる支援物質次第ということになります。
東南海と南海地震が連動して起きるとしたら果たして…
内閣府が発表した南海トラフ巨大地震の想定はマグニチュード9.1です。このとき、静岡県から紀伊半島、四国太平洋岸にかけて20メートル以上の津波が襲い、高知県では最大34メートルに達すると予想されています。
10メートルを超える津波が襲うとされる自治体は90市町村、震度7の激しい揺れを観測する地域は10県151市町村に及びます。また、地震の発生から5分以内に津波が襲う地域も数多くあります。
静岡県の駿河湾から浜名湖沖までの領域で起きるのが東海地震。浜名湖沖から紀伊半島潮岬沖にかけてが東南海地震。そこから西が南海地震です。この領域がすべて連動して揺れた時にM9.1の超巨大地震が発生すると想定されています。
地震発生直後、約210~430万人が避難所へ避難すると想定されていますが、膨大な需要に対して家庭内備蓄や公的備蓄だけでは食料や飲料水はとてもまかないきれません。
まず、地震後1~3日で食料が約1,400万食~3,200万食、飲料水は約1,400万リットル~4,800万リットル不足します。また、4~7日目は食料が約2,700万食~6,400万食、飲料水は約3,200万リットル~9,900万リットル不足します。
ピンとこない方もいらっしゃるかと思いますので避難者がもっとも少ないケースの210万人で食料、飲料水でどれくらい必要なのか?確認してみましょう。
まず、210万人が3日間1日3食をとると、210万×3日×3食=1,890万食です。一方、不足する食料は1,400万食です。つまり、210万人が1,890万 ― 1,400万=490万食しか食べることができません。これは、3日間でおおよそ2食ということになります。備蓄された食料は、避難所を訪れた人に順次配られることになるでしょうから、おそらく初日にすべてがなくなるでしょう。したがって、2~3日目は絶食と考えておく必要があります。ですが、飲料水はさらに深刻です。
210万人が飲料水を1人1日2リットル飲むと3日間で210万×2リットル×3日=1,260万リットルが必要です。不足する飲料水は1,400万リットルですから、1,260―1,400=マイナス140万リットルです。つまり、公的備蓄では1人1日2リットルを賄えません。もし、南海トラフ地震が真夏に起きたら、飲料水の不足は致命的なことになりかねません。
しかも、4~7日目はそれ以上のレベルで食料と飲料水が不足します。
以上のことから、食料や飲料水は1週間の備蓄でも足りないと考えています。
※ 一般に、1人1日3リットルの水を確保しておく必要があります
※ 家庭やテントなど避難所以外で避難している人は除外して想定しました
南海トラフ地震が時間差で起きたらどうなるのか?
東南海・南海地震は、過去おおよそ100~150年の間隔で発生しており、江戸時代(1605年)以降、約400年で4回発生しています。1707年の宝永地震は東海・東南海・南海地震が同時発生したとされる一方で、1854年の安政南海地震は安政東海地震が発生した32時間後に発生しました。また、1944年の昭和東南海地震が発生しましたが、約2年後の1996年に昭和南海地震が発生しています。
実は、南海トラフ地震は同時発生も困りますが、間隔をあけて起きることにも問題があります。
同時発生のデメリットは被害が甚大になることです。そしてこのとき被災地外での買い占めが発生します。
例えば、東日本大震災発生後の首都圏においては、米や水、レトルト食品(冷凍食品以外)、即席めん、パン、乾電池、カセットコンロ、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、生理用品、ガソリンなどがスーパーやコンビニ等で入手できない状態が長く続きました。⑺
また、熊本地震では発災後、熊本近隣県の食品スーパーで食料品等の一部が欠品・品薄状態が続きました。これは消費者による食料品の買いだめ、買い急ぎ、近隣県で被災地域に食料等を送るための一時的な需要の増加によるものとされています。₈₎
では、東海地震が先に起きたらどうなるでしょうか?
当然ですが連動が想定される東南海や南海地域で買い占めが起きます。また、東海地震が起きれば、近隣県である神奈川や東京などでも熊本と同じことが起きるでしょう。首都直下や相模トラフ地震も想定されていますから、首都圏全域でも買い占めが起きるかもしれません。しかし、新型コロナウイルスの流行をはじめた2~4月のおけるマスクのように、多くの方は「もう売り切れていた…」と購入できません。
そういった動きが落ち着くであろう3カ月後くらいに東南海・南海地震が連動してくれれば、不幸中の幸いです。食料や飲料水はもちろん、防災グッズなどの備蓄も多くのご家庭で十分にそろっているでしょう。
もしかしたら南海地震が先に起きるのかもしれません。また、連動することはないのかもしれませんが首都直下地震が先に起きるのかもしれません。富士山の噴火が先なのかもしれません。でも、噴火であろうと、どの地震が起きようとそれはいつか必ず起きること。それに対して私たちができることとは?「備える」ことだけであることを忘れないでください。
高層マンションは要注意。超長期地震振動による被害
「まだ揺れている…」
東日本大震災が起きた時、私の住む静岡県藤枝市も震度4の揺れがありました。が、その揺れの強さよりも時間に驚き、30秒以上経過して思わず外に出たことを覚えています。また、外に出た後もしばらく揺れましたから、おそらく2分近く揺れていたと思います。
そんな話を東京の知人にしたところ、「甘い!」と一喝されてしまいました。というのも、彼はタワーマンションの12階に住んでおり、当時は右に左にと大きく揺れて生きた心地がしなかったそうです。また、彼の奥さんは揺れが続いたことで吐き気やめまいを訴え、そのまま一晩寝こんでしまったそうです。さらに、椅子やソファー、冷蔵庫などの家具や家電が動いてしまい、片付けは夜中までかかったとのことでした。
このように、マンションの高層階は地震の揺れによる被害が大きくなる傾向が強いようです。
荒川らの調査によると、東日本大震災発生時に首都圏のマンションでは高層階になるにつれて家具の転倒率が高くなり、室内被害が深刻になることがわかりました。⑼
次ページの図のように、室内被害は高層階になるにつれて多く発生しています。階が高くなるにつれて被害発生率は徐々に上昇し、8階で被害発生が被害なしを上回っています。また、11階以上では9割以上の世帯で被害が発生しています。
被害の4割以上は「本棚から本が散乱した」や「食器棚のコップや皿が散乱して割れた」と回答しており、ガラスの破片対策のため枕元にクツの用意の必要性を感じます。
注目すべきは2つ目と3つ目の図でわかるように、多くの人が被害想定を甘くみていたこと。また、対策を実施していたにも関わらず大きな被害が出ていたことです。
・食器棚や本棚、家庭用電化製品等の転倒防止
・2段重ねのタンス、食器棚、本棚を固定して上段下段を固定
・食器棚等の扉、引き出しが空かないようにロック
・高価なもの、背の高い置物などの破損防止
・PCディスプレイ、液晶の転倒防止
・ドア、窓ガラスの飛散防止
・本棚、食器棚、家庭用電化製品等のガラス部位の飛散防止
以上、7項目の被害対策を実施しているか複数回答を求めたところ、2番目の図のような結果でした。多くのご家庭では、家具や家庭用電化製品の転倒防止しか対策をしていないようです。
一方で、事前に対策をしていた世帯の約6割で室内被害が発生していました。また、想像できると思いますが、高層階になるほど室内被害の発生率は高くなっていました。
荒川らの調査で注目すべきは次の点です。
室内被害対策をしていた世帯と、していなかった世帯で、室内被害の発生率はほとんど変わらなかった。
この事実は、「室内被害対策が正しい方法で行われていなかったと考えられる」と考察されています。⑼
東日本大震災発生時の首都圏は震度5強の揺れでした。この揺れで11階以上の住宅9割強になんらかの被害が出ていました。
同じレベルの揺れは東南海地震でも十分あり得るでしょう。また、首都直下地震ならそれ以上です。高層階に住む人は今すぐ室内対策を見直しましょう。
これが現実! 避難所格差とは?
震災時は、建物の倒壊や道路の陥没、橋の崩落、土砂崩れ、漁港の被災などで道路が寸断されるなど、あちこちでアクセス経路が寸断されることになります。そのため、南海トラフ地震では最大で約2,300集落が孤立する可能性が指摘されています。
当然のことですが、こういった集落に支援物質は届きません。現実に東日本大震災においては、いくつかの避難所は約3週間を経ても菓子パンとおにぎり1個の食事で、さらに朝食抜き昼夜2食の避難所がいくつかありました。⑽
これらの避難所における食事(とはとても言えないが…)は1人当たりの摂取エネルギーは1日平均500キロカロリーで、3週間後でも1日1,000キロカロリーでした。そのため、災害発生3週間後には生活不活発病や低栄養の被災者も現れ、野菜(ビタミン類・食物繊維)・タンパク質の不足は明らかでした。⑽
アクセス経路の寸断だけが避難所格差の原因ではありません。
阪神淡路大震災においては、マスコミ報道の偏りでボランティアや救援物資に避難所間の格差が生じました。
マスコミでよく報道された避難所にはボランティアや救援物資が多く集まる一方で、報道されない避難所には行き渡らない。その意味でも、食料品や飲料水などの備蓄は最低で2週間分。できれば1か月分確保すべきだと考えています。
まとめ
食料と水の公的備蓄は圧倒的に不足している。また、災害時はインフラが崩壊するため、支援物資が届かないことがあることがお分かりいただけたことと思います。
これは、とくに私のような田舎に住む人間には深刻な問題です。同じ藤枝市であっても、中心部と田舎では支援物資の量と質に大きな差が出ることが容易に想像できます。また、山間部などは道路が寸断され、東日本大震災の事例で紹介したように3週間菓子パン1個とおにぎり1個は十分にあり得ます。
都会でも高層マンションのリスクも深刻です。
たとえ建物被害が少なくても、エレベーターが止まれば買い物はもちろん、支援物資を受け取ることも困難になります。水などの配給も、それなりの備え(給水バック)のようなものがないと受け取り運ぶことすらできないかもしれません。これは、女性ならば尚更です。
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自分が置かれた環境で想定されるリスクを十分に理解し、適切な備えを今すぐにしましょう。
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