子どもを授かる前の女性に伝えたいこと!:子どもの出産が母親の脳に与える影響とは?
なぜ、私が妊娠期と産後のうつについて繰り返しお伝えしているのか?前回の記事でご紹介しました。
私の母は20数年も産後うつが続いていましたが、本人にその自覚はありませんでした。そして、今も多くの女性が抑うつを自覚しないまま苦しんでいます。
・日本のCOVID-19禍における周産期うつの実態とその関連要因 堀口 範奈, 中澤 港, 他 2022 年 42 巻 p. 509-517
抑うつを自覚している人は 298 名(12.9%)であり,自覚をしていない人のうちで周産期うつ高リスク者の割合は妊娠期 14.3%,産後 21.6%であった。
そしておそらく、魚離れが進んだ今、出産後のうつで苦しむ女性は私の母以上に病んでいると思われます。今回は、その事実についてご紹介します。
子どもの出産が母親の脳に与える影響とは?
母や胎仔にDHAを供給しますが、その母親がn-3系脂肪酸の摂取不足だと周産期うつで苦しむことになります。ですが、それでも母は自らを犠牲にしてでも子にDHAを供給します。それが、どういった結果に繋がるのか、事実だけでもご確認ください。
・妊娠期および産後抑うつとn-3系多価不飽和脂肪酸 浜崎 景 2019 年 28 巻 1 号 p. 16-
1.はじめに
n-3 系多価不飽和脂肪酸は、1970 年初頭にグリーンランドでの疫学調査以来 1)、心筋梗塞などの動脈硬化症に対する予防効果を期待され、現在では臨床現場において治療薬として使用されている。
その後、精神疾患との関連も研究されるようになり、うつ病と n-3 系多価不飽和脂肪酸に関する最初の報告は、おそらくは 1981年のイギリスの Fehily ら 2)の症例・対照研究である。
血中 n-3 が対照(年齢・性別でマッチングさせた健常者)と比べて、内因性うつ病患者で有意に低下していることが報告された。その後、1998 年にHibbeln が発表した 9 カ国における魚食とうつ病発症率の地域相関研究 を皮切りして、この分野における疫学調査や臨床試験が飛躍的に増えた。
その後さらにHibbeln によって妊婦を対象にした魚食と産後うつ病の 22 カ国の地域相関研究が発表され、これ以降は妊娠期および産後抑うつと n-3 系多価不飽和脂肪酸の研究が増えた。
本稿では、今までに報告された① n-3 系多価不飽和脂肪酸摂取および魚食と妊娠期および産後抑うつに関する疫学調査、②血中 n-3 系多価不飽和脂肪酸と妊娠期および産後抑うつに関する疫学調査、③ n-3 系多価不飽和脂肪酸による妊娠期および産後抑うつに対する効果を検証したランダム化比較試験をまとめたので報告する。
2.何故妊婦期および産後での n-3 系多価不飽和脂肪酸と抑うつに関する研究が重要なのか?
妊娠期間中は多量の n-3 系多価不飽和脂肪酸が胎児形成に必要とされており、死亡胎児の研究によると、特に妊娠第 3期(妊娠 28 ~ 40 週)では 1 日必要量が67 mg と最大になる。
ドイツでのコホート研究によると、妊娠週数および授乳月数と血中 n-3 系多価不飽和脂肪酸との間
に負の相関関係が示された。
妊娠期間中は胎児へのドコサヘキサエン酸 (DHA)供給にも耐えうるように、ホルモンバランスの変化により、α – リノレン酸からDHA がスムーズに合成されるよう代謝経路を調整する。 また、妊娠中期頃から肝臓ではリン脂質に DHA が増える方向に代謝が変化していく。
それでも十分なn-3 系多価不飽和脂肪酸が得られない場合は , 動物実験より母ラットは自分の脳を犠牲にしてでも n-3 系多価不飽和脂肪酸を胎児に供給していることがわかっている。
MRI の研究によると、実際 1 回の妊娠で健常な母親の大脳体積が出産までに約 4~ 7%も減少し、出産後にもとのサイズにもどるという報告もある。
この筆者らは、体積減少の 1 つの理由を必須脂肪酸の胎児への供給のためだと推測している。
さらに、灰白質に限った MRI の研究もされており、妊娠の前後でほとんどの部位の灰白質で 1%ほど減少しており、2 年間の追跡では海馬を除いては、もとのサイズに戻ることはなかった(海馬では半分ほど戻っていた)。
死後脳研究より、うつ病の有無にかかわらず子供を 2 人以上出産した女性ではそれ未満に比べて前頭葉(眼窩前頭皮質)の DHA が 35%も低かったという報告もある。
このようなことから、この期間中に十分な n-3 系多価不飽和脂肪酸を摂らないと、母子ともに精神神経障害の危険率が上昇する可能性が危惧される。
・COVID-19パンデミックによって増加する周産期うつ病に対する栄養学的戦略 久保 佳範 , 押田 恭一 2021 年 10 巻 1 号 p. 26-45
周産期にうつ病に罹患していた母親から生まれた児は、小児期に注意欠陥多動性障害、認知および言語発達の遅延、問題行動および情緒障害のリスクが高まることが報告されている。
ところが、日本における魚食は全体でも年々減っており、さらに出産を迎える 30 代に限ってみると、その低下は顕著である(Figure 1)。
こうした状況より、妊婦期および産後での n-3 系多価不飽和脂肪酸と抑うつに関する調査を行うことは重要と考えられる。
3.魚食あるいは n-3 系多価不飽和脂肪酸摂取量に関する疫学調査
Table 1 に示すように、この分野における最初の報告は 2002 年に Hibbeln が報告した世界 22 カ国を対象に行った地域相関研究であり、産後抑うつと魚食とに負の相関関係が認められている。
それ以降は今までに11 報ほどの調査が行われているが、その中でも大規模な調査がデンマーク、イギリス、日本から報告されている。
デンマークの研究では、妊娠中の魚介類摂取は産後 1 年以内のうつ病で入院する危険率には影響しなかったが、抗うつ薬の処方箋をもらう危険率が魚介類摂取の一番低い群で(一番高い群と比較して)46%も高いという結果であった。なお、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取においては、両者(うつ病で入院する危険率および抗うつ薬の処方箋をもらう危険率)で、特に有意な関連は認められなかった。
イギリスの研究では、妊娠 32 週目においてn-3 系多価不飽和脂肪酸摂取量と抑うつ症状との関連を調べているが、n-3 系多価不飽和脂肪酸摂取量が少ないほど、抑うつ症状を呈するオッズ比が高まるという結果であった。
この研究では更に、妊娠 18週目と産後 2 ヶ月目、8 ヶ月目での抑うつ症状を調べているが、妊娠 18 週目と産後8 ヶ月目で同様の(弱い)関連が認められたが、産後 2 ヶ月目では関連は認められなかった。
日本の大規模調査に関しては、筆者は現在環境省が進めている出生コホート研究 「子どもの健康と環境に関する全国調査(通称:エコチル調査)」に携わっており、この日本人の妊婦の母集団を代表するデータ使って、妊娠前期、中後期、産後で解析を行った。
その結果、魚食は妊娠前期では第 2 と第 3 五分位で、妊娠中後期は第 2 ~ 5 五分位で、産後抑うつは第 2 ~ 4 五分位で有意なオッズ比の低下が認められ、n-3 系多価不飽和脂肪酸摂取は妊娠前期では関連が認められず、妊娠中後期では第 2 ~ 4 五分位で、産後では第 2 五分位のみでオッズ比の低下が認められた。
4.血中 n-3 系多価不飽和脂肪酸に関する疫学調査
既述の魚食および n-3 系多価不飽和脂肪酸摂取量は、多くは食物摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire) が使用されており、半定量的に算出することは出来るが、正確なものではない。
また、エイコサペンタエン酸(EPA)や DHA といった n-3 系多価不飽和脂肪酸のほとんどは、魚の摂取量から算出されているが、実は抑うつに良いと言われている他の栄養素(セレニウム 27)、ビタミン D28)、カルシウム 29)など)も魚に含まれているため、本当に n-3 系多価不飽和脂肪酸が良いのかわからない。
そこで、ダイレクトに血中の n-3 系多価不飽和脂肪酸を測定することにより、両者の真の関連性を明らかにすることが出来る。Table 2 に今までに報告された 12 の研究を上げた。この中で最大の調査は、イギリスで行われた TheAvon Longitudinal Study of Parents andChildren (ALSPAC)と呼ばれるコホートの生体試料を使ったものである。
脂肪酸は妊娠中に何回か採取された中の一番最後の試料を利用し、赤血球のリン脂質脂肪酸を測定している。アウトカムは①周産期抑うつ(妊娠 18 週目で抑うつがなく、妊娠 32 週目もしくは産後 8 週目に抑うつがある)、②妊娠期抑うつ(妊娠 32週目で抑うつがある)、③産後抑うつ(産後 8 週目で抑うつがある)の 3 つである。
結果としては、EPA と DHA ともに有意な関連ではなく、EPA のみ傾向があった(p=0.083)。なお、その他の妊娠期抑うつと産後抑うつとには関連は認められなかった。この試験ではさらに、メンデル無作為群間比較(交絡因子や因果関係の逆転を排除することができる)も行われているが、既述の関連を弱めるだけだった。
次に参加者数が多いのが、オーストラリアで行われたコホートであるが、妊娠36 週目での赤血球のリン脂質脂肪酸を曝露とし、妊娠 36 週および産後 3 ヶ月後のDSM-IV(精神障害の診断と統計マニュアル)の診断基準を用いたうつ病(もしくはすでに抗うつ薬を内服している場合)と、EPDS が 10 点以上の抑うつをアウトカムにしている。
興味深いことに妊娠 36 週目における横断的解析では、DSM-IV によるうつ病で n-3 系多価不飽和脂肪酸との関連が認められたが、EPDS による抑うつでは関連が認められず、逆に産後 3 ヶ月では DSM-IV によるうつ病では関連はなかったが、EPDS による抑うつでは関連が認められた。
はっきりした理由はわからないが、n-3 系多価不飽和脂肪酸の効果は、重症度の違いや時期の違いが影響しているのかもしれない。既述したエコチル調査でも富山で登録している参加者限定で、血清 n-3 系多価不飽和脂肪酸との関連を調べたが、妊娠前期では関連があったが、妊娠中後期では関連が認められなかった。
妊娠中後期で関連が認められなかった理由としては、採血時期のばらつき(21.7 ~ 34.7 週)などが影響した可能性が考えられた。出産に近づくにつれて母親の n-3 系多価不飽和脂肪酸が減っていくことが報告されているが、我々が検討しようとしている関連が、この採血時期のばらつきによってマスクされてしまっている可能性がある。
また、エストラジオールやエストリオールなどの女性ホルモンが妊娠の期間中にそれぞれ 100 倍以上、1,000 倍以上になることが知られており、さらにこれらのホルモンはα – リノレン酸から DHA の代謝を促進することにより、交絡因子になっている可能性も考えられた。
なお、2017 年に Lin ら 37)のメタ解析の結果によると、周産期抑うつでは対照者に比べて、有意に n-3 系多価不飽和脂肪酸や DHA が低下しており、また n-6/n-3 比が高値であった。
5.ランダム化比較試験
主要評価項目が妊娠期あるいは産後抑うつで、言語を英語に限定したランダム化比較試験の論文が今までに 11 報告されている(Table 3)。
既述の食事調査および生体試料を用いた疫学調査の結果と比べて明らかにランダム化比較試験では、効果があったとされる報告の割合が少ない。
エビデンスレベルからすると、一般的に疫学調査よりも(例え n 数が少なくても)ランダム化比較試験の方が高いとされているが、“極端に低い群との比較”という観点では疫学調査の方が有利であるし、またランダム化比較試験は外的妥当性(一般化可能性)が低いという弱点もある。
効果の有無の違いをこの表から考察してみたが、投与量、投与期間、人種は関係なさそうである。最近、著者は Nishi ら(国立精神・神経医療研究センター)とSuら(中國醫藥大學(台湾))との共同研究で、日本人と台湾人の妊婦 108 名を対象としたランダム化比較試験を行ったが、n-3 系多価不飽和脂肪酸(1.8 g/ 日× 12 週)の効果は認められなかった。
この 10 年前には台湾の同グループより同様のランダム化比較試験が報告されているが、この試験では妊娠うつに対しては n-3 系多価不飽和脂肪酸の効果が認められている。
この 2 つの試験の大きな違いとしては、前者の投与量が 1.8 g/ 日に対して後者では3.4 g/ 日であり、魚食習慣のあるアジア系の妊婦を対象とした場合に限っては用量を上げなければならないのかもしれない。
いずれにしても、ランダム化比較試験数がまだ少ないのが現状であるが、メタ解析の結果をみると効果がないとする報告46)や、n-3 系多価不飽和脂肪酸の単剤治療で限定したものでは有益であったという報告もある。
6.周産期における n-3 系多価不飽和脂肪酸の必要量
エコチル調査の妊娠中後期の抑うつとの関連だけに注目するならば、1 日にn-3 系多価不飽和脂肪酸を 1.25 g(あるいは魚介類なら 1 日に 16.7 g)摂取していれば、オッズ比が有意に低下しているが、n-3 系多価不飽和脂肪酸に限っては多すぎると効果が薄れてしまうようだ。
2015 年に 「日本人の食事摂取基準」 が公表されているが、妊婦および授乳婦の場合 1 日1.8 g/ 日が目安量として設定されている。ただし、程度の差こそあれ魚介類にはメチル水銀が含まれているので注意しなければならない。
一般的には生物学的濃縮により大型魚ほど多くのメチル水銀を含有しているが、逆に小さいものであればその含有量を特に気にしなくてもよく、厚生労働省ホームページでは、“特には注意が必要でないもの(キハダ、ビンナガ、メジマグロ、サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオなど)”が公開されている。
ちなみに、「米国人のための食生活指針(2015-2020 Dietary Guidelines forAmericans)」によると、妊婦はメチル水銀の含有が低い様々な魚介類を最低でも227 g/ 週(最大で 340 g/ 週)摂取するように推奨している。
また、国際脂肪酸・脂質研究学会(International Society forthe Study of Fatty Acids and Lipids)の
欧州委員会は、妊婦や授乳婦は最低でもDHA を 200 mg/ 日摂るように推奨している。
おわりに
n-3 系多価不飽和脂肪酸は妊婦の健康維持のみならず、胎児や乳幼児における神経発達でも重要な役割を果たしており、さらなる研究が必要である。
また、n-3 系多価不飽和脂肪酸の介入試験では、どの報告をみても老若男女を問わず重篤な副作用はほとんど報告されておらず、安全性から妊婦や小児といった対象への投与もしやすい。栄養学的な介入でうつ病を少しでも改善できるならば、医療経済学的にも非常に有用である。今後、この分野での日本発の大規模な臨床試験が報告されることを期待したい。
まとめ
再度追記します。
「実際 1 回の妊娠で健常な母親の大脳体積が出産までに約 4~ 7%も減少し、出産後にもとのサイズにもどるという報告もある。」
「灰白質に限った MRI の研究もされており、妊娠の前後でほとんどの部位の灰白質で 1%ほど減少しており、2 年間の追跡では海馬を除いては、もとのサイズに戻ることはなかった(海馬では半分ほど戻っていた)。」
「死後脳研究より、うつ病の有無にかかわらず子供を 2 人以上出産した女性ではそれ未満に比べて前頭葉(眼窩前頭皮質)の DHA が 35%も低かったという報告もある。」
・食・栄養と子どものメンタルヘルス 大久保 亮, 松岡 豊 2018 年 59 巻 3 号 p. 253-259
周産期のω3 系脂肪酸欠乏は母親にも大きな影響を与える。動物実験によると,ω3 系脂肪酸欠乏飼料で飼育された母成獣は,出産後の食殺,育仔放棄,粗雑な巣作り,新生仔保温などの母性発動の低下が生じる。
ヒトでは以下のような事件が起きていますが、マウスの母獣で起きたことと繋がりがあると思いませんか?
パチンコのために育児放棄
パチンコをしたくて、生後4か月と2歳児を、13時間自宅に放置。4ヶ月の子は死亡。
保護責任者遺棄罪で、懲役1年6か月、執行猶予3年の有罪判決。罪が軽すぎると思うのは、私が虐待を受けて育ったからかな。#拡散希望RT #毒親育ち#虐待 #ニュース #HSP https://t.co/UD4fVYNwSa
— NPO法人ハッピーラボ理事長/フリースクールたんぽぽ/愛の森高等学園 (通信サポ) (@NPOtanpopo) March 25, 2023
充分な食事も与えず暴力を…
結愛ちゃんは約2年間も壮絶な虐待を受け続け殺された…
馬鹿にされ暴力を受け食事を抜かれ…
保護されたと思ったら措置解除⁈誰も親の目を覚させてあげられなかったとは💦
「行政に相談すれば子どもは助かる」と信じていた近隣の方は無念残念。
江戸時代は『親が居ない子どもは町内で育てた』と伝聞 https://t.co/IryGMRqqma— あん (@ZWBoNaofC60Z3DR) February 15, 2023
ピンときた方は、今すぐ10日間チャレンジを食生活に取り入れてください。
また、安全・安心な保存食を備蓄いただき、
今からやってくる食糧危機をチャンスに変えてください。
以下の5つはチクワを食べた方はもちろん、不調のあるなしに関わらずすべての人にお勧めしております。
チクワを食べた方は以下の記事は必読です。お役立てください。
・年度末は眠っている家族や親戚。「体調+メンタル」不良を改善する大チャンスかも?
↑ページ内で問診票が無料ダウンロードできますのでお役立てください。
16時間節食(1日の中で16時間以上食べない時間を確保する)は重要ですよ。
病気の臓器細胞は十分な節食時に病気の白血球に戻ります。また、その病気の白血球も赤血球に戻り、その後アポトーシスします。真剣に取り組むことを心からお勧めします。