部品不足の電卓が動かないように、脳も適切な部品が不足すれば壊れます!
10日間チャレンジは塾より効きます。そして、その理屈は脳の構造を考えれば誰でも理解いただけます。
脳を電卓に例えるなら、オメガ6過剰の食生活は電卓を故障させることになります。なぜなら、脳からDHAという部品が欠落するから。脳が壊れれば、いくら勉強しても理解や記憶もできません。参考書を買っても、塾に通っても、家庭教師をつけても無意味なのです。
脳は脂でできている!
脳は体重のわずか2%程度の重量ですが、全エネルギーの20%程度を使っています。また、脳の乾燥重量の約6割が脂質であり、その約17%はDHAです。これは、脳で使われる多価不飽和脂肪酸(PUFA)の約60%を占めます。(アラキドン酸は約12%)
一方で、脳に含まれる他のオメガ3脂肪酸はα-リノレン酸が総脂肪酸の約0.2%、EPAは0.1%以下と極めて少量しか含みません。
脳におけるアラキドン酸とDHA
ここで重要なのは、神経細胞にはDHAを合成する不飽和化酵素が欠損していることです。
動物は体内でオメガ3系脂肪酸を合成できません。そのため、DHAは食事から摂ったα-リノレン酸からEPAとドコサペンタエン酸(DPA)を経て合成されます。
しかし、ヒトのα-リノレン酸からEPAの合成は僅か5%です。また、EPAからDHAへの変換は0.5%以下。故に、脳内のDHAを十分に確保するにはDHAを直接食事から摂る必要があります。
脳内に入ったDHAはアラキドン酸と共にリン脂質のsn-2の位置に競合して結合します。
DHAとアラキドン酸は不飽和脂肪酸の位置を争って結合する。
ここも重要なポイントですが、体内にはリン脂質にオメガ6を優先的に取り込む酵素が存在します。その上、現代の日本人の食生活では、アラキドン酸の前駆体であるリノール酸摂取量は大幅に過剰です。そのため、ほとんどの人はオメガ6必須量の2倍以上。弁当やお惣菜、冷凍食品、カップ麺、ポテトチップス、菓子類などをよく利用する人は必須量の4~5倍摂っています。
・DHAとアラキドン酸はリン脂質のsn-2の位置を競合(イス取り合戦)して結合する
・体内にはオメガ6(アラキドン酸)を優先してリン脂質に取り込む酵素が存在する
・現代人のほとんどはリノール酸を大幅に過剰摂取している一方で、オメガ3は大幅な摂取不足である
事実として、ラットがn-6系脂肪酸を摂取すると、脳のリン脂質中のDHAはアラキドン酸に置き換わって低下します。したがって、ほとんどの日本人の脳にはDHAが不足しています。
【参考】細胞膜は先のリン脂質やコレステロールが二重構造になって構成されています。ラケシスAに含まれるアスタキサンチン(赤色)は、脂質二重層を貫通する形で存在するためビタミンEやβ-カロチンより強力な抗酸化作用を示します。
海馬は生まれ変わっている!
脳内では、とくに大脳皮質や海馬でDHAが豊富です。その海馬が「記憶」と係わる領域であること。「記憶」なくして「学習」は成り立たないことも誰もが承知しています。そして、海馬は常に新生、つまり生まれ変わっています。
・ドコサヘキサエン酸による脳機能改善作用と神経疾患への応用 橋本 道男 2006 年 6 巻 2 号 p. 67-76
(前略)
DHAは脳に豊富に含まれることから、従来からDHAは記憶・学習機能に重要な役割を担っていることが推察されていた。
動物実験により、奥山らのグループは、n-3不飽和脂肪酸欠乏食ラットでは、脳内DHA含量の低下とともに学習機能が低下することを明らかにした。
その後、著者らと鈴木らのグループから、DHAを摂取したラットやマウスでは、脳内DHA量の増加とともに、学習能がいずれも向上することが相次いで報告され、DHAの脳機能に対する必要性が明らかとなった。
この報告で忘れてはならないのは、DHAを摂取したラットやマウスはオメガ6の過剰摂取はしていないこと。一方で、現代の日本人はサラダ油や植物油脂、トランス脂肪酸を大量に食べています。そのためオメガ6過剰となり、いくら魚を食べても脳内DHAが増えません。
・健やかな脳の発生・発達と脂質 酒寄 信幸, 大隅 典子 2016 年 21 巻 4 号 p. 4_59-4_62
(前略)多くの動物実験および疫学研究によって、n-6 PUFA摂取過多およびn-3 PUFA摂取欠乏と脳形成不全や、将来の認知機能の低下や不安障害の発症リスクの増加に関連が示されている(以下略)
だから…
DHAサプリを飲んでも頭が良くならないのです。
認知症とDHA
アルツハイマー患者は、海馬のDHA量が同年齢の健常者と比べて著明に低下すること。また、神経細胞(ニューロン)を囲んでいるミエリン鞘が薄くなったり脱落していることが知られています。
ミエリン鞘は神経細胞を囲む絶縁体として機能しています。脳内の情報伝達は、軸索を通る電気信号によって行われます。その伝達イオンの漏出を防ぐのがミエリン鞘を構成するオリゴデンドロサイトです。
オリゴデンドロサイトがすき間なく緊密な多重膜で神経細胞を被膜し、脳内を新幹線並みのスピードで情報が駆け巡ります。そして、そのオリゴデンドロサイトの主要構成成分はDHAが結合したホスファチジルコリンです。
また、ひとつのオリゴデンドロサイトは正常なら20本くらいの神経細胞を束ねています。それが故の新幹線並みのスピードであり、その脱落により情報伝達は〝ガクン″と徒歩並みのスピード(2~3歩/秒)まで落ちることになります。
なぜミエリン鞘が脱落するのか?
オメガ6過剰の食生活を続けると、脳のリン脂質中のDHAはアラキドン酸に置き換わります。そのため、オメガ6過剰の食生活では心・血管系機能だけでなく脳機能・中枢神経系の機能も低下させ、脳の発達障害、認知症、うつ病などの精神疾患の発症要因となります。
その要因のひとつがミエリン鞘の脱落ですが、アルツハイマーだけでなく大うつ病でも起きています。
・慢性ストレスの内側前頭前皮質オリゴデンドロサイト細胞系譜への影響 髙橋 浩平 2022 年 58 巻 12 号 p. 1161
大うつ病(MDD)は,全世界で年間 3 億人が罹患している慢性疾患である.最近の病理学的研究では,うつ病患者の死後脳において,前頭前皮質(PFC)でのミエリン形成の低下を示すことが明らかになっている.
また,反復社会敗北ストレス(RSDS)や予測不可避な慢性軽度ストレスなどのうつ病モデル動物は,PFC でのオリゴデンドロサイトの分化やミエリン形成,ランヴィエ絞輪維持に対して変性を引き起こすことが明らかにされている.(中略)
オリゴデンドログリア細胞(Olig2 +細胞)の過剰なアポトーシスによって脱髄が生じることを明らかにした.(以下略)
その要因も想像に難くありません。
なぜなら、健康に無頓着な人はオメガ6過剰摂取の食生活をしている上で、砂糖や小麦などの糖質の過剰摂取も続けているからです。
繰り返し説明している通りオメガ6は炎症を促します。また、そこにブドウ糖があれば炎症により糖化が促されます。よって、ミエリンは脱落・脱髄となりますから、脳の情報伝達スピードが落ちることになります。ならば、認知症となるのが自然ですね。
学力を上げたい!
成績を上げたい。
そう、本人はもちろん、ご家族も望んでいる一方で、学力を上げようもないほど脳機能が低下する食事を当たり前のように食べ続けている。
無知は罪ですよね。
そもそも、アルツハイマーになるような食生活ですから、学力が上がるはずもありません。
・食生活とアンチエイジング 藤原 葉子 2009 年 24 巻 2 号 p. 133-140
(前略)
認知症とアルツハイマー症・DHAの作用
DHAは脳や網膜に多く含まれ、脳内では大脳皮質・灰白質のリン脂質脂肪酸の30~40%を占めている。そのため、以前からEPAやDHA摂取と脳における機能や学習能力の向上が示唆されていたが、この10年間で脳科学分野におけるn-3系PUFAの研究は進展し、アルツハイマーモデルラットやマウスにDHAを投与すると、βアミロイドの蓄積が減少低下し、低下した学習機能が回復することなどから、アルツハイマー症に対するDHAの予防・治療効果の可能性が示されてきた。
Freemanらによるメタアナリシスも、大うつ病にn-3系脂肪酸投与が有効である可能性が示されており、いくつかのコホート研究や介入試験も、アルツハイマー症の症状には差がみられないものの、うつに対しては有意な効果が得られているものが多い。
ニューロプロラクチンD1(NPD1)は、炎症の収束期に発現する脂肪酸代謝産物の網羅的解析から発見された抗炎症作用を持つDHAの代謝産物であるが、脳虚血・再灌流時の神経障害に対して、抗アポトーシス作用を持つことが報告されている。
さらにNPD1は、光シグナル伝達において副産物として生成し、加齢や黄斑変性などで網膜色素上皮細胞に沈着するAE2による網膜ダメージを防ぐ作用を持つことも報告されており、DHAは過酸化というよりは、むしろ加齢や脳循環不全によって引き起こされる酸化ストレスから神経細胞を保護する役割を持っているようである。(以下略)
トランス脂肪酸についても追加情報です!
トランス脂肪酸が入った物は有害ですが、サラダ油を使う料理でも一定割合がトランス型に変換されます。
・「認知症」になりにくい食生活について 森田 宏 2020 年 55 巻 1 号 p. 6-12
(前略)
7. 脳に悪い食べ物(DHA のはたらきを妨げるトランス脂肪酸)
トランス脂肪酸は,リノール酸などの不飽和脂肪酸に水素を添加して固形にした時にできます.この脂肪酸は,マーガリン,マヨネーズ,ケーキ,クラッカー,ポテトチップス,チキンナゲッツ,シュークリーム等で使われています.
パンに塗るなら,マーガリンよりもバターをお勧めします.
トランス脂肪酸がなぜ悪いのかは,食事から摂取されたトランス脂肪酸は,脳に運ばれ,DHA のすぐそばに入り込み,脳の思考プロセスを混乱させるからです.
さらに,トランス脂肪酸は酵素のはたらきも邪魔し,必須脂肪酸 γ-リノレン酸,DHA, プロスタグランジンといった脳に欠かせない物質へのモデルチェンジも妨げます.
オメガ 3 が不足した人は,血液中のトランス脂肪酸が増えています.
この理由は,ケーキ,ポテトチップス,ピザなどをたくさん食べる現代人の特徴となっています.
WHO(世界保健機関)と FAO(国連食糧機関)はトランス脂肪酸の摂取量を一日の総摂取エネルギーの 1%(日本人は 0.7%)以下に抑えるべきだと勧告しています.
日本人のトランス脂肪酸の摂取は低いのですが,ファストフード店の魚フライ,フライドポテト,ドーナツには 1 個当たり 4 グラムものトランス脂肪酸が含まれているという報告もあります.ファストフード好きな人は基準を超えてしまいますので気をつけましょう.(以下略)
まとめ
日本脂質学会はオメガ6とオメガ3の摂取比率は2:1を推奨しています。が、一部の専門家は「1:1」と言っています。
・「認知症」になりにくい食生活について 森田 宏 2020 年 55 巻 1 号 p. 6-12
(前略)
栄養学を専門とする研究者は,オメガ 3 とオメガ 6 の脂肪酸の比率は1 : 1 が望ましいといいます.
(以下略)
強調したいのは、サラダ油を使う料理を毎日のように食べているご家庭では、程度の差はありますがミエリン鞘の脱落・脱髄が必ず起きているであろうという事実です。
そして、そのような食生活で学力が上がるはずもありません。
その理由もすでに説明をしました。
一言、「認知症になるような食生活を続けていて、脳が正常に働くのはムリです!」
・ドコサヘキサエン酸(DHA)経口投与によるラットの空間記憶学習能力の変化
島 根 医 大 第 一 生 理1)、 神 戸 大 医 第 一 解 剖2)、 ハ リ マ 化 成 研 究 部3)
○ 蒲 生 修 治1)、 橋 本 道 男1)、 杉 岡 幸 三2)、 三 沢 嘉 久3)、 桝 村 純 生1)
【目的 】 ドコサヘキサエン酸(DHA)の長期投与が、ラットの空間記憶学習に与える影響を8方向放射状迷路を用いて検討する 。(中略)
【考察】ω-3系多価不飽和脂肪酸(ω一3PUFA)の欠乏は脳内DHAレベルを低下させ、それに伴い記憶能力の低下を促すといわれている。
ところが最近になって、脳の発達が完了した離乳後の動物をω-3PUFA欠乏食で飼育しても学習能力にはほとんど影響がないと報告された。
しかし今回我々は、離乳が完了した5週齢のラットをω-3PUFA欠乏食で飼育し、それと並行してDHA純品を長期間経口投与したところ学習成績において非投与群との間に有意差を認めた。
この結果は、離乳後の動物においてもDHA、及びDHAの前駆体となるcu-3PUFAの継続的な摂取が学習能力の保持には必要である事を示唆している。
【結論】魚粉無添加飼料で飼育したラットはDHAの長期投与により、有意な記憶能力の向上が観察された。
不登校や起立性調節障害でお悩みの方は以下をお役立てください。