糖質を控えた方が良い本当の理由!「糖化」と「メイラード反応」とは?

実は、血糖はもろ刃の剣でもあります。

先週の記事「糖質制限は「是」か「非」か? 記号に惑わされず、糖質についての最低限知っておくべき事実!」でそう指摘しましたが、今回はこの事実につてい「メイラード反応」について説明したいと思います。

 

糖尿病とはインスリンシステムが瓦解した状態!

糖尿病とは、カンタンに言えばインスリンシステムが瓦解した状態です。この状態では、血液中に余分な血糖が残ることになります。

では、ここで何が起きるのか?というと、ここで糖化反応が起こります。

 

糖化とは?

体内における糖化反応とは、血液中の余分な糖質が体内のタンパク質や脂質の官能基(分子中のケトン基やアルデヒド基)と結びつくことです。その結果、両者ともに本来の働きを失い、体の機能が正常に働けなくなります。

また、正常な機能を失った糖化したタンパク質や脂質は、フリーラジカルなどを生じるため、糖尿病に限らず、動脈硬化やガン、アルツハイマー、そして老化の原因とされています。

ここで重要なのは次の二点です。

  • 糖化反応は触媒を必要としない
  • AGEsができると、その排除にとても時間がかかる

 

糖化反応は触媒を必要としない!

食パンをトースターで焼くと、こんがりきつね色の焦げ目ができます。これは、パンに含まれた糖とタンパク質が化学反応を起こしたことによります。そしてこの時、あの柔らかなパンが硬くなります。このことからも、糖と反応したタンパク質はその性質が大きく変化することがわかります。

そして、この反応を発見者にちなんでメイラード反応と呼びます。

体内温度は40℃未満だから…

トーストを、外はパリッときつね色に、中はふっくらモチモチに仕上げる温度は200~250℃程度の熱が必要です。この熱エネルギーにより、パンは化学反応で上記のような変化をします。このように、化学反応が起きるには何らかの活性化エネルギーが必要となります。

これは、体内における化学反応も同じですが、私たちの体内温度はせいせい40度未満。この熱量では、十分な化学反応には力不足です。そしてこんな低エネルギーで化学反応を起こすため、必要とされるのが触媒です。

 

酵素と呼ばれる触媒!

触媒とは、特定の化学反応の反応速度を速める物質で、その反応の前後で自身は変化しないものを指します。

例えば、水素と酸素を一緒にして200℃で加熱しても何の反応も起こりません。しかし、そこに少量の銅(Cu)を入れて加熱すると,水素と酸素は速やかに反応して水を生成します。そして反応後、加えた銅には何の変化も起こりません。

体内における多くの化学反応で、そんな触媒の働きをするのが酵素です。

 

糖化反応は酵素が必要ない!

実は、糖化反応は酵素を必要としません。

この事実はとても重要です。というのも、細胞は脂質やタンパク質でできている。そう言ってもそれほど言い過ぎではないからです。

下は細胞膜の略図ですが、ご覧のように細胞膜には脂質とタンパク質がたくさん使われています。

すなわち、体内における糖化反応は、糖が全身60兆個(最新では30数兆個とされています)と言われる細胞と出会えば起きてしまうわけです。極めてシンプルな反応であるが故、この反応は臓器を問わず、体のどこにでも容易に起こりうることになります。

要は、血中に余分な糖があれば、全身どこでも糖化反応が起きることになります。

 

AGEができると元には戻らない!

糖化とは、カンタンに言えば「こげる」こと。トースターで焼いた食パンやホットケーキを思い浮かべるとわかりやすいのですが、どちらもおいしそうなきつね色です。

余分な糖が血中にあれば、この「こげる」反応が体内で触媒の助けもなく勝手に進んでしまいます。そんな糖化の反応は、大きく2段階に分けられます。

初期段階では、ブドウ糖がタンパク質(アミノ酸)の分子にくっつき「シッフ塩基」をつくります。シッフ塩基は構造的に不安定ですが、その一部は「アマドリ化合物」という安定した構造に変わります。

ここまでが初期段階で、この段階で血糖を適切にコントロールできればタンパク質や脂質の変性を防ぐことができます。

 

AGEになると元には戻らない!

続く後期段階では、アマドリ化合物が複雑な反応を経て最終的にはAGEになります。AGEは、タンパク質と糖質から最終的に生まれる物質の総称で、日本語では終末糖化産物と呼ばれます。

AGEには、「カルボキシメチルリジン(CML)」「ペントシジン」「クロスリン」など100種類以上あると考えられており、これらをAGEsと総称します。

一度生まれたAGEが元のタンパク質と糖質に戻ることは決してありません。タンパク質の性質が変わって、体の機能がどんどん失われていきます。

 

AGEの生成が顕著に現れるのがコラーゲン!

AGEの生成は無自覚に進みます。痛みなどの不快な症状を自覚することはありませんが、確実に細胞の機能は失われていきます。

なかでも、それが顕著に起きるのが末梢血管です。

血管のコラーゲンと糖が結合するとAGE-コラーゲンが生じます。このとき、コラーゲン本来の弾力性が消失します。これが動脈硬化で、進行すればするほど末梢血管の構造そのものが破壊されます。

この事実はとても重要です。なぜなら、血流量の要求が多い臓器ほど、糖化のダメージが大きく受けることを意味するからです

例えば、腎臓や肝臓、目、脳などでは、その働きに大量のエネルギーを必要とします。そのため、内部には無数の毛細血管が張り巡らされています。ならば、ここが糖化すれば…

糖尿病の合併症には次のようなものがあります。

・糖尿病網膜症:網膜内の血管に障害が起こり、視力の低下や失明を招く病気
・糖尿病腎症:ろ過の働きをする糸球体の毛細血管がそこなわれ人工透析が必要となります
・糖尿病神経障害:末梢の血管が障害され、足の傷やヤケドに気づかず壊疽(えそ)を起こす

どれも耳にしたことのある病気だと思います。また、糖尿病の悪化で壊疽を起こした手足を切断することになる。そんな話もいちどくらいは聞いたことがあるでしょう。また、これが認知機能にも影響を及ぼすことは、誰もが容易に想像できるはずです。

 

ただし、無抵抗ではありません!

AGEの生成により、誰もが糖尿病になるわけではありません。また、失明したり、手足を失うわけでもありません。

その理由は、やはり個人差と個体差があることです。また、体も無抵抗ではなく、免疫機能により異物(AGE)を排除しようと消化して排除しようとします。

この働きにより本来の機能を失った構造を再構築しようとしますが…

困ったことに、AGEの排除にはとても時間がかかります。

体で使われる本来のタンパク質から変性しているため、消化も難しいし排泄も容易ではありません。そのため、新たな細胞と置き換わることが極めて困難です。

例えば、いったん糖化したAGE-赤血球は、その寿命が尽きるまで本来の機能をとりもどすことはありません。また、他の細胞でも、本来の細胞の倍以上にわたってそのまま残るものもあります。

 

まとめ

高血糖が続くとAGEsが必ず蓄積します。

このとき痛みなどの不快な症状を自覚することはありませんが、確実に体は蝕まれます。また、痛みなどの症状が現れたとき、すでに取り返しがつかない状況であることが多々あります。

だからこそ、初期の糖尿病はほとんど無自覚です。また、無自覚であるが故、患者における病気への認識が甘くなります。

糖質はヒトのエネルギー源として必要なものであることに疑いはありません。

しかし、ヒトの体はタンパク質や脂肪を糖へ変換する機能を有していることも忘れてはなりません。

日本における分子栄養学の普及に多大な影響を与えた三石巌(故人)は、著書「医学常識はウソだらけ!」で次のような指摘をされています。(一部を引用します)

中学で教わったはずだが、元素記号というものがある。炭素がC、水素がH、酸素がO、窒素がN、硫黄がS。それだけ覚えておけばいいだろう。

 

CHOとあったらこれはなんの意味だ。読みは「チョー」でよろしい。CHOは炭素、水素、酸素を続けて書いたものだが、これはこの三つの元素の化合物を指している。そして、糖質も脂質も「チョー」なんだ。(中略)

 

昔から三大栄養素という言葉がある。これは、糖質、脂質、タンパク質の三つだ。このたんぱく質は糖質や脂質と違って、CHONまたはCHONSだ。読みは「チョン」、「チョンス」だ。つまり、タンパク質は糖質や脂質と違って窒素がどれにもついている。そして、一部のものには窒素のほかに硫黄がついている。それを巌流アミノ酸っていうんだ。

 

さっき肝臓でタンパク質がブドウ糖に変化すると書いた。これを「糖新生」という。CHONがCHOに変わるってことだ。

・糖:CHO
・脂質:CHO
・タンパク質:CHONまたはCHONS

繰り返しますが、糖質は必要なものです。しかし、体はタンパク質や脂肪を糖に変換し、利用することができます。

また、余分な糖は、極めて容易に「毒」として全身を駆け巡ります。さらに、それが糖化を起こしてAGEsを生成して体の機能不全につながる

この客観的な事実を忘れないでください。

また、この反応が無自覚であることも強調しておきます。

つまり、ジュース類を飲むことなど自殺行為に等しいのです。