糖質制限は「是」か「非」か? 記号に惑わされず、糖質についての最低限知っておくべき事実!

糖質や炭水化物を制限する「糖質制限ダイエット」がブームになって、すでに2年以上経過しているでしょうか?

そんな糖質制限で「ダイエットできた!」と喜んでいるヒトがいる一方で、糖質制限を「危険だ!」と断じているヒトたちもいます。

こういった意見に対する私は、糖質制限否定派は古典的な考えに囚われているヒトが多く、推奨派は、分子栄養学など新しい知識を取り入れているヒトが多いと感じています。

例えば、前者の典型は栄養士さんで、私は栄養学は現代人の生活には〝ほぼ″役に立たないどころか、それを信じて利用すると逆に自分の首を絞めることになると考えています。そしてそんな栄養士さんが口にする、典型的に役に立たない意見とは次のようなもの。

「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖!」

こんな話は、誰もがいちどくらい聞いたことがあると思います。が…

実はコレ、ウソです。脳はケトン体もエネルギー源として利用しています。また、このケトン体は筋肉などでもエネルギー源として使われます。

ケトン体とは?アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸)、アセトンの総称で、脂肪酸やアミノ酸の不完全代謝産物。

でも、栄養士さんは本気で「ブドウ糖の摂取は必要!」と考えています。栄養学を学んできてしまったわけですから、これも仕方のないことでしょう。なぜなら、私も同じだったからです。

思いあがったカン違い野郎!

この仕事をはじめたとき、私は次のような思いあがったカン違いをしていました。

「西洋医学は対症療法だからダメ!漢方を学んだから、これで多くのヒトを救える!」

20年位前までの私は、そう思いあがっていました。でも、ヒトの体や心ですから、教科書通りには治りません。正直、そんな治らないヒトだらけで逃げ出したくなるほどでしたが、これもお客様の「漢方は時間がかかる!」というカン違いのおかげで続けることができてしまいました。

※ 当時のお客様にはお詫びと感謝しかありません。そこで鍛えられ今がありますので。ありがとうございました。また、誠に御迷惑をおかけしました。

何事も前提条件が重要!

30代前半、私は逃げ出したくなるほど悩みましたが、そこで当たり前の事実に気づきました。それは、漢方は公害(排気ガスや食品添加物など)がない時代に効いたアプローチであることです。

「前提条件が違うじゃないか!」

ということで、そこから独学ですが脳科学や分子栄養学、脂質栄養学、生化学などを学び今に至っています。そのため、次のような話も枚挙に暇(いとま)がありません。

「この漢方薬は、近くの漢方の病院で処方されて飲みましたがまったく効きませんでした。」

 

「でも、そのときは今私が話したような注意をしなかったでしょ。とにかく、それをやめて同じ漢方薬続けて何が起きるのか?10日間だけ試してみましょうよ。」

 

「はい、わかりました…(不満気)」

 

「これやめて!」という引き算だけでなく、「これ飲んで!」という足し算も加わるケースがほとんどですが、同じ漢方薬で本人がビックリするほど短期間で効果が出たケースなど数え切れないほどありました。

この話を聞けば、漢方の病院で漢方薬を処方されてもほとんど効果がない理由がわかると思います。食事指導などほぼありませんし、あっても古典栄養学のマチガッタ知識による指導ですから、私からすればトンチンカンな指導です。

※ 一般の医師は、漢方の知識すらありませんから、効かないのは自然です。

要は、私もそのひとりでしたが、何かを学ぶとヒトはその世界の中で漂うことになります。医学を学べば、医学の世界の中で。栄養学を学べばその世界の中で。漢方を学べば、漢方の世界の中で「正解」を探してしまう。

これが、専門の弊害ですが、専門の中に正解はありません。とくに、こころの問題はそれが顕著です。これは、全国の小中学校にカウンセラーが配置され、しかも少子化で子供の数が減っているのに不登校が増えていることからも明らかです。

幸いなことに、私は30代前半でこの事実に気づきました。また、そのおかげもあって、「記号」に囚われることがほぼなくなりました。

「糖質制限」という記号!

糖質制限の否定派は、糖質がもっとも重要なエネルギー源であるという大前提に囚われていると私は感じています。そこで、ほとんどの方が深く考えたことがないであろう「血糖値」について解説します。

空腹時血糖値と食後血糖値からわかることとは?

空腹時血糖値の正常基準値は70~100㎎/㎗で、食後2時間の正常基準値は~140mg/㎗です。つまり、一日の血糖値の正常変動幅は70~140㎎/㎗ということになります。

さて、いつもは単純に眺めているだけであろうこの数値について、少し掘り下げると「糖質」について別の世界が見えてきます。

「㎎」という単位を「g」に変換すると、70~140㎎ = 0.07~0.14g/㎗になります。では、「㎗」ですが、この単位は1㎗ = 100㎖。つまり、1ℓ = 10㎗です。したがって、0.07~0.14g/㎗を1ℓ中に換算すると次のようになります。

0.07~0.14g/㎗ × 10 = 0.7~1.4g/ℓ

文系出身の方はチンプンカンプンかもしれませんが、これは1リットル中0.7~1.4グラムの血糖があるのが正常であるという意味です。

重要なのは血糖の変動幅です!

繰り返しますが、空腹時血糖値は70~100㎎/㎗で食後血糖値は~140㎎/㎗が正常値です。これをグラムとリットルに変換すると、空腹時と食後の血糖値は1リットル中で0.7~1.4グラムの変動幅の範囲でコントロールされるのが望ましいことになります。

では、血糖の変動幅 0.7g/ℓ はどんな意味をもつのか?というと、それはヒトの体内にある血液量で換算するとよくわかります。

例えば、体重が60キロのヒトは、血液量が約4リットルです。ここに0.7g/ℓ を掛けると、4ℓ × 0.7g/ℓ = 2.8g です。

おおよそ3グラム

これが、ヒトに許される(ブドウ糖の弊害から体を守る)糖質の変動幅です

なぜ、糖質の許容範囲はこれほど狭いのか?

実は、血糖はもろ刃の剣でもあります。

血糖は、細胞のエネルギー源のひとつですから、少なすぎても困る(生命活動を維持できない)一方で、多すぎると細胞を壊す原因になります。

例えば、血糖値が50㎎/㎗未満になると脳などの中枢神経がエネルギー(糖)不足の状態になり、生命活動の維持ができなくなります。

そのため、体は低血糖に対応するバックアップシステムを豊富にもっています。

低血糖を防ぐため、グルカゴンやアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンが作動し血糖値を上げるように働きます。

一方で、血糖値の上限を下げるホルモンはインスリンだけ。たったひとつしかありません。

では、この事実はいったい何を意味するのか?

ヒトの体は、低血糖への備えはいくつもあるのの、高血糖に対しては脆弱であると解釈できます。すなわち、飲み過ぎ食べすぎに対する体の備えはほとんど無力です。

糖質制限反対派の意見は?

「ヒトは高血糖に対して無力である!」

糖質制限派のヒトたちは、この事実に蓋をした上でさまざまな理屈を並べているように感じます。そして少なくとも、この事実に対して回答された反対派の意見を私は目にしたことがありません。

マレにあったとしても、私たちは玄米を食べてきたから腸が長いとか、奥歯が臼のようになっているのは穀物をすりつぶすためだから炭水化物が正しい食生活だなど、「高血糖にヒトが弱い!」といいう事実を無視した理屈ばかりです。

まとめ

私は、子どもと大人では糖質の摂り方を変えるべきだと考えています。単純に、子どもはある程度は糖質をとっていいが、50歳をすぎればある程度の糖質制限は必須でしょう。

※ ただし、子どもでもジュースやゼリー飲料、アイスなど、いちどに大量の砂糖をとるものは大きなリスクとなります。大人なら、それはなお更です。

例えば、私と妻、スタッフの清水は50歳を超えてから、次のような生活を送っています。

私:仕事上がりのビールは絶対にやめたくないので、夕食時はお米は食べない。昼食時に玄米を100グラムほど食べている。

妻:おやつ(植物油脂は入っていない)をやめたくないので、夕食時にお米は食べない。昼食時に玄米100グラムほど食べている。おやつは、昼食後まで。それ以降は食べない。

清水:おやつは基本的に食べるのをやめた。昼食と夕食時のご飯は、白米に雑穀を混ぜて一回に100グラムほど。

私たちがこういった生活をしているのも、ある程度の糖質制限は「認知症」や「ガン」、「動脈硬化」の予防につながると考えているからです。

ですが、私の考え方は「あくまでも人間らしく生きること!」ですから、私はビールを飲むし妻はおやつを食べます。また、ふだんはおやつを食べない清水も、私が買ってきたお土産はパクパク食べます。

ということで、私たちは糖質制限をしていますが、その内容は厳格な糖質制限ではありません。要は「記号」で捉えないことです。

ご自分なりの判断で、糖質をコントロールしていきましょう。その理由は、血糖値の変動幅でお分かりいただけたと思います。

なお、次回はメイラード反応の話に進みたいと思っています。