ダイエットの原理とは?実は、脂肪は燃焼しません。
「脂肪を燃焼させるために運動をしている!」
ダイエットのために、そんな努力をしている方は少なくないでしょう。当社のスタッフのひとりなど、毎日スクワット100回を続けているそうです。
また、彼女はそれに加えてさらなる運動をはじめたようで、「エアー縄跳びを3000回やりはじめた!」と言っていました。これは本人もやりすぎだと思ったようで、1日1000回に減らしたそうですが…
まあ、私はこれでもやり過ぎだと思うのですが、それは置いといて…
そんなダイエットについて、これを化学反応という視点で見ると違った景色が「観えて」きますのでご紹介します。
質量保存の法則とは何か?
東京など都会にはないと思いますが、我が田舎町である岡部町には「組」があります。地域で10軒前後が、学校でいう「クラス」のような単位を作り、その地域の草刈りやどぶ掃除、防災訓練などを共同で行います。
地域の住民が集まり、組(クラス)ができる。
同じように、「化合物」は原子が組み合わさってできます。例えば、私が毎晩欠かすことのないお酒(アルコール)は、炭素原子2個と水素原子6つ、酸素原子1つでできています。
そして、このアルコールが体内で分解されるとき3つの酸素(O²)、つまり酸素原子が6つ使われます。アルコールの原子を加えると、炭素原子2個と水素原子6つ、酸素原子7つです。
そしてアルコールが酸素で分解されると、2つの二酸化炭素(CO²)と3つの水(H²O)ができます。
- 二酸化炭素2つ:炭素原子2つ、酸素原子4つ
- 水3つ:水素原子6つ、酸素原子3つ
合計で炭素原子2つと酸素原子7つ、水素原子6つでアルコールと原子の数は同じです。
このように、化学反応の前後で原子の数や種類が増えたり減ったりせず、組み合わせのみ変わること。これを「質量保存の法則」と呼びます。
化学反応には「燃焼」や「熱分解」などさまざまですが、反応にかかわるすべての物質の質量の和と、反応結果としてできた生成物の質量の和は常に同じになります。
もっと細かく言えば、化学反応式を書いた時、以下のように矢印の前にある組成式の原子の種類と数は、矢印の後の組成式のそれぞれの原子数の数と変わることがありません。
C²H⁶O + 3O² → 2CO² + 3H²O
化学反応におけるエネルギー
雑草やどぶの掃除は「組」の人たちで行いますが、作業に対するテンションは人により違います。なかには、自分の家の周り“だけ”しか掃除をしない人もいます。そのため、このテンションを高めるほどの効果はありませんが、作業後にペットボトルのお茶が配られます。
化学反応も同じで、テンションを高めるためのエネルギーが必要です。これを「活性化エネルギー」と呼び、このエネルギーが反応を起こすきっかけになります。また、「アルコールと3つの酸素」が「2つの二酸化炭素と3つの水」とのテンションの差を「反応熱」と呼びます。
これは石油ストーブで考ええるとよくわかります。
灯油は、常温のままでは発火しません。だから、ポリタンクで保存できますし、購入できます。その灯油も、火をつければ燃えはじめます。つまり、つけた火が「活性化エネルギー」です。
一方で、灯油は燃えはじめると熱を発して暖かくなります。この熱が「反応熱」です。
このように、化学反応が起きると、そこには必ずエネルギーの出入りがあります。エネルギーが放出される。もしくは、エネルギーの吸収がおきます。
脂肪の燃焼とは何か?
「脂肪を燃焼させる!」
「脂肪燃焼ダイエット!」
世の中ではそう謳われて販売されるダイエット商品が五万とあります。また、運動でも「脂肪を燃焼させる」と表現されます。これは、「脂肪が燃えてなくなってしまう」という意味になるでしょう。
しかし、「脂肪がエネルギーになってなくなる」ことはありません。先のアルコールの分解でわかるように、質量保存の法則でそれはお判りでしょう。では、何が起きるのか?
脂肪を作っていた原子はなくならない!
ダイエットで脂肪が減るのは、脂肪を構成している原子の組み合わせが変わるから。具体的には、脂肪は酸素と反応し、二酸化炭素と水に変わります。なんと、アルコールと同じですね。笑
つまり、ダイエットとは、脂肪が分解されて二酸化炭素と水になり、体外へ排泄すること。です。言い方変えると、排泄される水と二酸化炭素の重さ分だけ体重が減ることになりますね。
では、どこで脂肪は代謝されるのか?
脂肪は脂肪細胞に取り込まれます。脂肪細胞には「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」の二種類があり、それぞれ違う働きを担っています。
白色脂肪細胞
白色脂肪細胞は、体内で使い切れない過剰なエネルギーを中性脂肪として蓄える働きがあります。こちらは、いわゆる脂肪太りの原因となる細胞で、皮下や内臓の周囲に多く存在しています。
妊娠末期の三か月(胎児期)、乳幼児期・思春期に集中して増殖し、一度作られると数は減少しにくいという特徴があります。また、思春期以降にもエネルギー過剰になると、さらに細胞の数を増やして脂肪を取り込むことがわかってきました。
褐色脂肪細胞
褐色脂肪細胞は、白色脂肪細胞とは逆の、脂肪を減らすという働きをします。脂肪を二酸化炭素と水に変え、このとき熱を放出してエネルギーを消費します。成人では、首回り、肩甲骨付近、腎臓の周り、胸部大動脈周辺に少量存在しています。
骨格筋が少ない幼児期には、脂肪を燃焼して熱を発生させることで体温維持をしています。そのため、この褐色脂肪細胞が多く存在します。しかし、基礎代謝の役割を担う骨格筋ができあがる成人になると、熱源が骨格筋に移行するため減少していきます。
なぜ、褐色肥満細胞で脂肪が代謝されるのか?
褐色脂肪細胞は脂肪なのに褐色です。その理由はミトコンドリアで、ここは酸素を利用してエネルギーを生み出すシステムをもちます。そして、酸素は鉄(赤褐色)と結びつきますから、それを取り込んだミトコンドリアがたくさんあるから褐色となります。
このミトコンドリアに存在するUCP(熱産生タンパク質)が、白色脂肪細胞から分離された脂肪酸を取り込みエネルギーへと変換します。
ミトコンドリアによる脂肪代謝に栄養素は必要不可欠!
脂肪は、そのままではミトコンドリア内膜を通過することができません。ミトコンドリア内部まで脂肪を運ぶ役割を果たす成分が「L-カルニチン」で、必須アミノ酸のリジンとメチオニンから作られるアミノ酸の一種です。
※ L-カルニチンはカツオに多く含まれます
ミトコンドリア内に取り込まれた脂肪を代謝するには、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシンなどのビタミンB群やビタミンCが必要です。
また、これらは脂肪の代謝に限らず、糖質やたんぱく質の代謝に欠かすことのできない栄養素です。したがって、ビタミンB群が不足していたら…
いくらカロリーを減らしても、脂肪や糖質、たんぱく質の代謝が進みませんから、体内に蓄積されてしま痩せることはできません。
まとめ
栄養が不足したままダイエットをすると、筋肉が減少します。これは、体が栄養を確保するための手段で、筋肉を壊して体はその時に必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルを確保しようと働きます。
この筋肉が極端に減少することを「サルコペニア」と呼び、その後、「サルコペニア肥満」と呼ばれる肥満状態を招くことになります。
カンタンに言えばリバウンドで、筋肉が減ったまま脂肪だけが増えます。また、これが繰り返されることでサルコペニア肥満になります。
このサルコペニア肥満が怖いのは、筋肉の減少でますます慢性炎症が起きやすくなることです。そしてその結果、普通の肥満よりも高血圧や糖尿病のリスクが高まります。また、骨や関節も衰えやすくなり、とても危険な状態になります。
脂肪を代謝させるには、栄養が必要である。
しかし、日本人のほとんどは小冊子「標準偏差からわかる見逃せない事実とは?」でもご紹介したように、脂肪代謝に必要なビタミンB群、とくにビタミンB1が不足しています。この事実から目をそらさないでください。
なお、次回はもう少しダイエットについて踏み込んでみたいと思います。そして、なぜ、今更私がダイエットについて語ろうと思ったのか?という点についても、ご紹介していきます。