なぜ、認知症になるのか?ニューロン(神経細胞)のネットワークが切断されたなら…
家の玄関や窓が壊れていれば泥棒も容易に侵入して荒らされるように、脳の関所である血液脳関門が壊れれば異物が侵入して脳機能は乱れることでしょう。
そんな脳の関所は、現代日本人が好んで食べる食事で容易に壊れることを「なぜ、認知症になるのか?脳の〝関所″「血液脳関門」が破壊されたら脳機能はどうなる?」でご紹介しました。
また、免疫が過剰な働きをすれば花粉症やアトピー、食物アレルギーなどを発症するのと同じように、脳で免疫が過剰な働きをすれば脳機能が乱れることも容易に想像できます。
残念なことに、この脳の免疫も現代日本人が好んで食べる食事で容易に乱れます。それも、ある意味致命的な結果をもたらすことを「なぜ、認知症になるのか?もし、脳の免疫機能が壊れたら脳機能はどうなるのだろうか?」で指摘しました。
そして、脳の情報伝達ネットワークを構成するニューロン(神経細胞)もまた、現代日本人が好んで食べる食事で多大な影響を受けるという事実をご紹介しましょう。
海馬と記憶
脳に、記憶の司令塔や入口としての役割を担ってい海馬(かいば)と呼ばれる器官があります。
大脳辺緑系の一部をなす海馬は記憶、学習と深く関係していると考えられている。
これを支持する臨床例としてたとえば,てんかん治療のために海馬除去手術をした患者,あるいは虚血により海馬の一部に障害を起こした患者がそれ以後に身の回りに起こる出来事を記憶できなくなる(前向性健忘)ことなどがある。
・海馬の神経回路とその機能 飯島 敏夫, 市川 道教, 松本 元 1991年 31 巻 5 号 12-18 より引用
このことから、海馬がしっかり機能しないと〝記憶″に問題が生じることが分かったわけですが、その働きをもう少し詳しく確認しておきましょう。
海馬の役割
勉強には予習復習など、反復学習が重要とされています。また、覚えていた漢字も、パソコンに頼っていると書けなく(思い出せなく)なることは年配の方なら思い当たることでしょう。そのカギを握るのが海馬です。
私たちが新しく見聞きした情報や経験は、まずは海馬に保存されます。(短期記憶の一時保管)また、海馬で整理された情報のうち、繰り返し使われるものは大脳皮質に送られ、長期記憶として定着します。逆に、使われない情報は忘れ去られることになります。
海馬の新生
重要な事実として強調したいのが、海馬では〝大人になっても″新しい神経細胞が生まれていることです。
成人(大人)の脳であっても、記憶や感情を司る海馬(歯状回)では神経幹細胞から新しい神経細胞が作られる現象が確認されていて、その数、毎日おおよそ700個と言われています。
ただし、新しい神経細胞が生まれるのは海馬の約3分の1。残りの約65%は生まれた時のまま生涯を終えます。
海馬と認知症
実は、アルツハイマー型認知症の初期段階で真っ先に萎縮が始まるのが海馬です。そして…
アルツハイマー型認知症では、海馬の歯状回における神経新生(新しい神経細胞が生まれる働き)が早期(発症前)から低下・障害されることが分かっています。
パソコンのメモリで例えるなら、「16GBから1GBに減ってしまった」のが海馬の萎縮です。
そして当然ですが、海馬が萎縮したとき神経新生が低下するとともに、神経細胞数も減少しています。この時、記憶障害が起きることは容易に想像できますよね。
リノール酸過剰摂取がニューロンに与える影響
日本人が大好きな唐揚げやかつ丼、天ぷら、炒め物、マヨネーズ、食パン、揚げパンなど、リノール酸過剰摂取が血液脳関門を破綻させること。また、脳の免疫機能を狂わせてニューロン(神経細胞)や髄鞘(オリゴデンドロサイト)が貧食されることは以下のページでご紹介しました。
☑ 「なぜ、認知症になるのか?脳の〝関所″「血液脳関門」が破壊されたら脳機能はどうなる?」
☑ 「なぜ、認知症になるのか?もし、脳の免疫機能が壊れたら脳機能はどうなるのだろうか?」
上記だけでも認知症は進行しますが、リノール酸過剰摂取は直接的に認知機能を低下させます。なぜなら、リノール酸過剰摂取は海馬の新生を阻害するからです。
海馬の新生
ヒトを含む哺乳類では、生涯海馬では新しい神経細胞が生まれ続けていること。また、海馬は認知機能に欠かせない重要な部位で、新しい記憶の形成や一時的な保持を担っていることは前述しました。
以前より、ラット胎仔(妊娠中のラットのお腹の中の仔)における脳の発達では、DHAは神経幹細胞をニューロンへ、アラキドン酸(ARA)はアストロサイトへの分化を亢進することが知られています。これはもちろん、人間も同じだと考えられます。
2006年に橋本らは、ラット胎仔大脳皮質に由来する培養神経幹細胞に DHA を添加するとニューロンへの分化が亢進されることを見出し、神経幹細胞における DHA の発生学的意義を明らかにした。
さらに、我々はラット胎仔大脳皮質に由来する培養神経幹細胞に ARA を添加すると、DHA とは異なりアストロサイトへの分化が亢進されることを報告し、ARA と DHA は胎仔大脳皮質に由来する神経幹細胞において異なる機能を有することを示した。(中略)
高 LA/低 ALA 飼料(リノール酸を多く含む一方で、α-リノレン酸は少ない)を摂取した妊娠マウスの胎仔の大脳皮質において、神経幹細胞のニューロン分化率が減少し、一方でアストロサイト分化率が増加し、神経幹細胞のニューロン・アストロサイト分化運命転換が早期に起こってしまうことを明らかにした。
実際に、胎仔大脳皮質においてニューロン数が減少し、アストロサイト数は増加することも見出した。
・脳の発生・発達における多価不飽和脂肪酸の役割 酒寄 信幸 2022年 31 巻 1 号 7-14 より引用
同様に、成人以降も神経新生される海馬にDHA供給が必要です。
DHAが成体ラット海馬における神経新生に必要であることが他研究グループから発表されている。
・大脳新皮質形成におけるオメガ3脂肪酸DHAとEPAの異なる役割の解析 酒寄 信幸 より引用
つまり、リノール酸過剰摂取状態では海馬となる神経細胞の新生が滞ることになります。
逆に、リノール酸(オメガ6系脂肪酸)の過剰摂取は、脳の海馬における神経新生(新しい神経細胞の誕生)を阻害することが近年の研究で示唆されています。
現代の欧米型の食形態では、ARA(アラキドン酸)の前駆物質であるリノール酸などn-6系脂肪酸の摂取は過剰であるのでARA不足は起こらないが、n-3系脂肪酸はARAと拮抗するためにn-6系脂肪酸の摂取増加によりDHAは相対的に欠乏する可能性がある。
事実、ラットがn-6系脂肪酸を摂ると、脳のリン脂質中のDHAはARAに置き換わり低下する。
そのため、n-3系脂肪酸の摂取不足によるn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸のバランスの乱れは心・血管系機能のみならず脳機能を中心とした中枢神経系の機能をも低下させ、脳の発達障害、認知症やうつ病などの様々な精神神経疾患の発症要因の一つと考えられる。
・脳・神経機能維持とn-3系脂肪酸 橋本 道男 2018年 151 巻 1 号 27-33 より引用
これらから、オメガ6過剰摂取は記憶を司る海馬の新生を妨げ、海馬の萎縮に繋がると考えられます。その結果が認知症というのは想像に難くありませんね。
リノール酸過剰摂取が続くと…・新生されるニューロン(神経細胞)数が減少する
・アストロサイトの数が増える
アストロサイトの炎症がニューロンや海馬に与える影響
「なぜ、認知症になるのか?脳の〝関所″「血液脳関門」が破壊されたら脳機能はどうなる?」に記したように、オメガ6過剰摂取はアストロサイトに炎症をもたらします。そして、このアストロサイトの炎症はニューロンに深刻な影響を与えることになります。
炎症によって有害な状態に変化したアストロサイトは、神経毒性を持つサイトカインや有害物質を放出し、ニューロンのアポトーシス(細胞死)やダメージを引き起こします。さて、海馬のニューロンは…
・約3分の1は、大人になっても新生され続ける
・約65%は、生まれた時から保持され続ける
上記の事実はどのような結果をもたらすのか?まとめてみましょう。
まとめ
リノール酸過剰摂取が続くと…
1.神経幹細胞から分化するニューロン数が減少する → 大人になっても新生されるはずの海馬が減少(約3分の1保持されるはずの海馬が減る)

2.神経細胞から分化するアストロサイトが増える → 炎症性アストロサイトがサイトカインなどを放出するためニューロンがアポトーシスする → 約65%の海馬や新生された海馬、海馬以外のニューロン(神経細胞)も減少する

3.炎症性ミクログリアが増える → ニューロン(神経細胞)や髄鞘を貧食(海馬やそれ以外のニューロンも減少)

1~3が起きれば、脳の情報ネットワーク網は破れた網のようにズタズタとなりその機能は破綻することでしょう。
4.血液脳関門の〝関所機能が破綻″するため、異物が侵入する → もたらす結果は誰も予想できないが… → 脳機能が狂うことだけは疑いが無い!
ならば、認知症にならない方が不思議!
そう思うのは、果たして私だけでしょうか…?

