COVID-19(新型コロナウイルス)感染症と私たちはどう向き合っていけばいいのか? 必殺技はありません。当たり前のことを地道に積み重ねていく。これがすべてだとお考えください。
「こりゃ、当てが外れたかもしれないな…」涙
ウイルスには基本的に次のような症状があります。
✓ ウイルスは高温に弱い:60℃で30分間もしくは100℃で1分間加熱するとウイルスは死滅する
✓ ウイルスは低温に強い:4℃で数週間から数カ月もしくは‐70℃で数年間ウイルスは死滅しない
✓ ウイルスは紫外線で直ちに死滅する
※ ウイルスの抵抗性は条件により変化する
以上のような基本的知識により、私は台湾やシンガポールの状況を前提に「日本も6月になれば自然収束するのでは…?」と期待していました。
✓ 台湾の1月最低平均気温:13℃(1年で最も寒い):東京2℃
✓ シンガポール:常夏。1年を通して最低気温が25℃を下回ることはマレ
シンガポールは北緯1度の赤道直下です。日本とは比較にならないほど紫外線の量も多いですから、私はこのふたつの国が新型コロナを抑え込めたのは上記のような自然条件があるからだと思っていました。(思いたかった。が本音)
しかし、残念なことにシンガポールは18日、1日の感染者数としては最多の942人の感染が確認されました。累計感染者数は21日時点で9,000人超と、インドネシアやフィリピンを上回っています。
ということで、天気頼みはやはり無理ということがわかりましたので、あらためてご連絡を差し上げました。
※ シンガポールにおける新規感染者の95%は移民労働者です。その多くは低所得国の出身で、建設現場などで働き、同じ部屋の中で10人ほどが密集して暮らしています。やはり、感染症対策の基本は「三密」を避けることに尽きるようです。
もくじ
1.今、何が起きているのか?また、何をするべきなのか?
1‐1.スペイン風邪の教訓
1‐2.自然免疫と獲得免疫
1‐3.集団免疫
1‐4.再生産数
2.新型コロナウイルスの基礎知識【重要】
2‐1.新型コロナウイルスの侵入とは?
2‐2.うがいの効果
2‐3.手洗いと消毒
2‐4.ウイルスの出芽
3.炎症反応の収束
3‐1.炎症のイニシエーション
3‐2.なぜ、アレルギーが治らないのか?
3‐3.サイトカインストームと炎症収束のメカニズム
1.今、何が起きているのか?また、何をするべきなのか?
【メルケル首相の演説より引用】
こうした状況において、あらゆる取り組みの唯一の指針となるのは、ウイルスの感染拡大速度を遅くする、数カ月引き延ばす、そして時間を稼ぐということです。時間を稼ぎ、研究者に治療薬とワクチンを開発してもらうのです。同時に、発症した人ができるだけよい医療を受けられるようにするための時間稼ぎでもあります。
1‐1.スペイン風邪の教訓
およそ100年前、1918年1月からの約2年間、人類は史上最悪といわれる感染症パンデミックを経験しました。「スペイン風邪」とも呼ばれた新型インフルエンザです。
当時、世界人口の3分の1から半数近くが感染し死者は5000万~8000万人、2,000年代のアメリカにおける研究では死者1億人という説もあります。日本でも2,300万人の患者と388,000人余りの死者を出しました。
当時、ヨーロッパは第一次世界大戦の主戦場でした。スペイン風邪は戦争という過酷な環境のもと、密集して移動が繰り返されて大流行しました。
日本でのスペイン風邪を知る人の証言として「貧しく栄養状態の悪い人から犠牲になった」とあることから、戦場における兵士の栄養状態および感染による死者数は想像以上だったことでしょう。
なお、スペイン風邪は1918年の11月に1度目のピークを迎え、2度目のピークが1920年の1月にありました。
スペイン風邪流行時
✓ 第一次世界大戦に動員された兵士数は7千万人だった
✓ 当時は現在と比べて食糧事情が悪かった
✓ 当時の日本では移動の手段が限られていた
現在
✓ 訪日外国人3,000万人超(2018年、2019年)
✓ 各国から他国への人の移動:おそらく数億人以上
✓ 日本国内における人の往来も当時の1,000倍以上(おそらく)
このことから、少なくとも今回の新型コロナにおける2度目の感染ピークは緊急事態宣言が解除された後、たとえ海外からの渡航者がなくても比較的早い段階で起きると予想されます。
1‐2.自然免疫と獲得免疫
免疫には自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫とは、簡単に言えば侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞を排除する仕組みです。ここで活躍するのは主に好中球やマクロファージといった食細胞で、大雑把に異物を食べて処理してくれる反応です。
獲得免疫とは、感染した病原体を特異的に見分けてそれを記憶する仕組みです。同じ病原体が侵入してきた時、効果的にそれを排除する仕組みで適応免疫とも呼びます。
ここで活躍する免疫担当細胞は、主にT細胞やB細胞といったリンパ球です。
1‐3.再生産数
多くの専門家は「外出制限は少なくとも2年は必要である!」と指摘していますが、この根拠は「再生産数」にあります。
再生産数とは、「あるウイルスを1人の感染者が何人に感染させるか」を示す値です。例えば、1人が2人に感染させると再生産数は2となります。そして、このペースで感染し、さらに10回続くと…(合計11回)
2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2=2,048となります。
一方で、再生産数が1を切れば流行は収束していくことになります。
当初WHO(世界保健機関)は再生産数を「1.4~2.5」と推定していましたが、政府の専門家会議による推計では、東京都における今年3月下旬の再生産数は1.7。香港や英国の大学チームの見解では、3.3~5.5との報道もあります。
注意してほしいのが、この数値は「なんの対策もしていなかった!」ケースにおけるコロナウイルスの感染力です。
そして、私が危惧しているのはこのウイルス感染者に無症状の人がとても多いことです。
例えば、クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号では、PCR検査で陽性であった人の17.9%が無症状でした。年齢の内訳はわかりませんが、クルーズ船ですから年配者が多かったことは容易に想像できます。
また、南カリフォルニア大学(USC)は、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の一部の住民を対象に新型コロナウイルスの抗体検査を行ったところウイルスに感染している人の割合は約4.1%に上り、実際に感染している人は、確認されている感染者の40倍に及んでいる可能性があることが示されました。
さらに、4月23日衝撃的なニュースが報道されました。
「コロナ以外で入院予定の患者の6%が新型コロナウイルス陽性」
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慶応大学病院(東京・新宿)が4月中旬、新型コロナウイルス以外の患者に対し手術や入院前にPCR検査をしたところ計67人のうち4人(約5.97%)が陽性となった。いずれも新型コロナの感染を疑う症状はなかった。
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さらに、以下は東京におけるPCR検査の陽性率です。
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・2月2日~3月21日の7週間:0~7・4%(外出自粛要請前)
・22~28日:17%
・4月12~18日:21・6%
・同19~21日:33・9%
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これらの事実を前提にすると、すでに東京都の昼間の人口約1,300万人の4%、おおよそ52万人はすでに感染していると想定しておくべきたと私は考えます。
その上で、ニュースなどで報道されている日本の休日の景色を想像してみてください。
日本では新幹線などがガラガラである一方で、鎌倉や湘南などの観光地は車の渋滞が起きているようです。もし、GWに高速道路の渋滞があるようなら、少なくとも5月中の緊急事態宣言の撤回はないと思われます。
1‐4.集団免疫
厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査を月内にも実施する方向で準備を進めているようです。検査は数千人を無作為に抽出して実施する見通しですが、私はアメリカ以上に無症状感染者がいると想像しています。
なぜなら、日本人は新型コロナウイルスの侵入する入り口であるACE2受容体を世界中でもっとも多くもつ人種だからです。この事実から、私はアメリカ以上の大流行を危惧していました。しかし、幸いにしてそこまでの流行はなさそうです。
※ SARSもACE2受容体が侵入口でしたが、私の記憶が正しければ日本人に感染者はいなかったと思います。したがって、感染リスクは侵入口の数以外の要素が強いと思われます。
その意味で、再生産数を低下させることができるかもしれません。なぜなら、無症状感染者が多ければ多いほど「集団免疫」が期待できるからです。また、それは再生産数を低下させることにつながるからです。
人はウイルス感染から回復すると免疫を獲得します。例えば、一般にいちど風疹にかかると再感染することはマレです。新型コロナウイルスも同じで、感染拡大が進めば、免疫を獲得した既感染者が増えることになります。
当然のことですが、既感染者はウイルスに感染したことのない人の「盾」となります。
なぜなら、既感染者に新型コロナウイルスが侵入しても、獲得免疫によりウイルスが退治されるからです。つまり、既感染者は感染源となり得ません。したがって、再生産数を低下させることができます。
このように、既感染者が未感染者の盾となる保護効果を「集団免疫」と呼びます。専門家が「新型コロナは人口の6~7割が感染するまで終わらない。それには2~3年かかる。」と話すのは、再生産数を低下させパンデミックを防ぐことができるからです。
繰り返しますが、日本人はACE2受容体を世界中の人種で最もたくさんもっています。これは、強盗が侵入できる窓が多い家に例えることができます。しかし、現状を鑑みると欧米各国と比べてはるかに被害は少ないようです。
この事実は、一部の専門家が指摘しているように日本人の白血球の型が新型コロナウイルスに強いのかもしれません。
ただし、第2波、第3波は不可避です。また、新型コロナウイルスはRNAウイルスであるが故、ウイルスの変異も容易に想像できます。したがって、スペイン風邪と同じように、第2第3波の被害が大きくなることも想定されます。
以上のことを踏まえると、メルケル首相の言葉がすべてだと思われます。
「ウイルスの感染拡大速度を遅くする、数カ月引き延ばす、そして時間を稼ぐということです。時間を稼ぎ、研究者に治療薬とワクチンを開発してもらうのです。」
※ WHOはワクチンの実用化には早くて12~18カ月かかるとしています
2.新型コロナウイルスの基礎知識
「当社のお客様は重症化リスクが低いだろうな~」
前回もそうお伝えしてきましたが、その理由のひとつは新型コロナウイルがエンベロープウイルスであるからです。
脂質二重層からなるウイルス膜をもつウイルスをエンベロープウイルスと呼びますが、ウイルスが宿主細胞に侵入する際はウイルス膜と細胞膜が膜融合する過程が必要です。また、ウイルスが細胞から出芽する際に身にまとうエンベロープ(脂質二重層)は宿主細胞の細胞膜から直接獲得します。
2‐1.新型コロナウイルスの侵入とは?
先のように、新型コロナウイルスはACE2受容体に結合します。その後、エンベロープを身にまとった新型コロナウイルスは、細胞膜を利用したエンドサイトーシス(下図のような膜融合)で侵入します。以下のような膜融合して細胞内に侵入します。
例えば、細胞膜とHIV-1感染性との関連を求めた研究では、細胞膜の流動性が亢進すると対数的に感染性は増加することがわかっています。膜の流動性が5%増加すると感染価は2.4倍、5%低下するとHIV-1感染は56%抑制されるようです。
※ この点については後述しておりますのでご確認ください
細胞膜には図のように「いびつ」な形のたんぱく質が無数に浮かんでいます。
リン脂質の尾部に入る飽和脂肪酸は直線構造ですが、不飽和脂肪酸は二重結合部で120度折れ曲がる構造です。その曲がった尾が、隣のリン脂質との隙間を作り膜の流動性を保証します。
例えば、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸は二重結合がひとつあります。そのため、上右のように尾部が1か所折れ曲がります。
これで膜の流動性は上がりますが、これではいびつな形のたんぱく質の隙間をうまく埋めることができません。そこで、多価不飽和脂肪酸が重要な役割を果たします。
実は、脂肪酸の分子はC-Cの単結合部位で回転運動をしています。以下はDHAの構造ですが、二重結合が6つあります。そこは固定された形ですが、単結合部位が回転運動をしています。
頭の中がゴチャゴチャになりそうですが、DHAが非常にフレキシブルに形を変えることが想像できると思います。
オメガ3であるDHAが末端から3つ目に二重結合がある一方で、オメガ6のアラキドン酸ですが、二重結合の位置が6番目にあります。その差は、以下のような構造の変化の差となります。
つまり、多価不飽和脂肪酸は細胞膜に浮かぶ「いびつな形」のたんぱく質の隙間を埋めるよう、フレキシブルに構造を変えています。
オメガ3はオメガ6より末端に近い部分に二重結合がありますから、より大きく形を変えることができます。それが膜の流動性を‟少し„低下させ、かつ隙間を減らすことで異物の侵入を妨げます。
スペイン風邪は、世界的には致死率が10%を優に超えていたようです。その一方で、日本では第1波で感染者の1.22%、第2波は5.29%でした。当時の日本人は、動物性たんぱく質のほとんどを魚からとっていました。
◆DHAの構造的意味 吉田 敏 2017 年 26 巻 1 号 p. 9-25
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/26/1/26_9/_article/-char/ja/
2‐2.うがいの効果
うがいの効果については、次のような調査結果があります。
・冬場に、全国で18~65歳の合計約380名のボランティアを「水でうがい」、「ヨウ素系うがい薬でうがい」、「何もしない」の3群に分けた2カ月間の追跡調査をした。※ うがいは15秒を2度行い、1日3回以上実施
【結果】
「水うがい群」は「何もしない群」に比べてかぜの発症が40%減り、うがいのかぜ予防効果が実証された。
「ヨウ素系うがい薬群」では、対照群と差がなく、はっきりした予防効果がみられず、原因として正常細菌のバランスが薬によって壊されたためではなかと推測される
文献:里村一成、川村孝、うがいによる風邪の予防効果 Medical Practice,23(8):1460-1461,2006.
うがいは予防効果がありますが、のどには常在菌が生息しています。また、この常在菌が粘膜機能を正常化に役立ちます。ヨウ素系うがい薬は常在菌を殺しますので使用には注意が必要です。
2‐3.手洗いと消毒
新型コロナウイルスはエンベロープを身にまといます。これは脂ですので、消毒用エタノールにより容易に溶けます。完全に消毒できます。
同じ効果は0.5%過酸化水素、0.1%次亜塩素酸ナトリウムでも得られます。
一方で、0.02~0.5%塩化ベンザルコニウムおよび0.02%グルコン酸クロルヘキシジンは効果が低くなります。
2‐4.ウイルスの出芽
前述したように、細胞内で増殖したウイルスが細胞から出る(出芽)するとき、身にまとうエンベロープ(脂質二重層)は宿主細胞の細胞膜から獲得します。
この時、侵入時の膜融合の逆パターンにより細胞から出芽します。
実は、インフルエンザウイルスに関しては、この過程をDHAが阻害します。具体的には、DHAから生成するプロテクチンD1が強毒性のインフルエンザウイルスの増殖を顕著に抑制します。
脂肪酸代謝物によるRNA輸送を介したインフルエンザウイルスの増殖抑制機構 今井 由美子 2014 年 50 巻 4 号 p. 295-299
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6900
注目すべきはそのメカニズムで,PD1は宿主細胞で複製されたウイルスRNAの核外輸送のみを特異的に阻害していることが分かりました。つまり、細胞内で増殖したウイルスが細胞膜に融合する前の輸送段階を阻害します。
【参考】
細胞内の物質移動はモーターたんぱく質が行います。信じがたいことに、たんぱく質が輸送物資を歩いて運びます。ウイルスは細胞内に入るとこの輸送システムをハイジャックします。
インフルエンザの輸送をプロテクチンD1が阻害し、細胞からの出芽を防ぎます。私は新型コロナでも同じ効果が期待できると考えています。
3. 炎症反応の収束
アレルギー反応は免疫細胞の暴走が原因である!
これが一般的な説明ですが、鼻炎や喘息、蕁麻疹、アトピーなどのアレルギー症状のある方なら、以下の表に書かれた薬品名に見覚えがあるのではないでしょうか?
クリックすると拡大します
とても重要なのでここをしっかり読んでほしいのですが、白抜きの部分を除き、これらの薬はすべて免疫の暴走を止める薬ではありません。アラキドン酸(オメガ6)から生じる脂質メディエーターの生成を阻害することで効果を発揮する薬です。
これらの薬が頭痛や生理痛のような痛みはもちろん、鼻炎や喘息などアレルギー症状に効果を発揮する。この事実から次ことが想像できます。
脂質メディエーターは、痛みやアレルギー発症のトリガーである。
3‐1.炎症のイニシエーション
炎症反応はケガや感染症に対する重要な生体応答です。新型コロナウイルスも同じで、炎症反応の初期過程では、まずはウイルス感染に応答して局所的に炎症が生じます。
まず、炎症は血管外で起きます。すると、その近くの血管が拡張(血管透過性の増大)し、そこから好中球(免疫細胞)が漏れ出してきます。この好中球は自然免疫系の最前線として働きますが、ここで発赤・熱感・腫脹・疼痛といった炎症の症状が生じます。
また、この炎症により血管の透過性が亢進し(血管が拡張して血漿成分が漏れ出してくる)、血管から免疫細胞が次々と駆け付けることになります。
3‐2.なぜ、アレルギーが治らないのか?
私たちの細胞膜で使われる多価不飽和脂肪酸(オメガ6とオメガ3)は体内で合成ができません。そのため、食事からとる必要があります。そのため、細胞膜における多価不飽和脂肪酸は食事内容と正の相関をします。
そんな多価不飽和脂肪酸は体内で次のような働きがあります。
✓ オメガ6(リノール酸やアラキドン酸など):炎症を促す。血を固める。アレルギー促進
✓ オメガ3(α‐リノレン酸、EPA、DHAなど) :炎症を鎮める。血液サラサラ。アレルギー抑制
このオメガ6とオメガ3の摂取比率は2:1が理想(日本脂質学会)とされていますが、現実には多くの日本人の摂取比率は10:1以上と大きくオメガ6に偏っているのが現状です。
コンビニ弁当や冷凍食品、外食などに偏る場合、その摂取比率は50:1を超えている人も決して珍しくありません。では、これがいったいどんな状況なのか?無理やりですが森林火災に置き換えて想像してみましょう。
✓ 枯れ葉や枯れ木:オメガ6
✓ ボヤ:脂質メディエーター
✓ 清掃員:免疫細胞からでる炎症性サイトカイン
✓ 消防士:オメガ3
✓ 消火剤:アレルギーの薬や痛み止め
※ 清掃員は、ボヤを見つけたらついでに周りの枯れ葉を集めて効率よく焼いてしまう仕事のみをしています。
森に枯れ葉や枯れ木(オメガ6)が増えるとボヤ(脂質メディエーター)が発生します。これは森の新陳代謝に必要な反応ですから、枯れ葉が増えれば自然発生します。
それを見つけた清掃員(免疫細胞)は、一気に枯れ葉を処理しようとかき集めてきた枯れ葉を一緒に燃やします(炎症性サイトカイン)。ただし、清掃員の仕事はここまでのため、枯れ葉を燃やしすぎると火事になることがあります。
それを消し止めるのが消防士(オメガ3)ですが、少子化(オメガ3の摂取不足)により消防士の数が足りません。
しかし、枯れ葉はどんどん積もります。ボヤはあちこちで発生します。また、清掃員は効率よく仕事をしようと、そこに枯れ葉を集めて燃やします。そのため、あちこちで消火作業が行われないままに火事が起きてしまいます。
消火剤(薬)を散布していくらかの火は消し止めることができますが、すぐに次の火の手が上がってしまい追いつきません。
これが鼻炎や喘息などのアレルギーや頭痛などの痛みです。
消防士(オメガ3)の数を増やすとともに、枯れ葉(オメガ6)を減らさないとこの火事は収まらない。これは、誰もが容易に想像できることでしょう。
3‐3.サイトカインストームと炎症収束
頭痛や生理痛、なんらかのアレルギー症状のある方は、新型コロナウイルス感染時におけるサイトカインストームのリスクが高くなると私は想像しています。
先のような森林火災なら、新型コロナウイルス感染は「空気の乾燥」と「風」に例えることができるでしょう。
すでに、あちこちでボヤと火事が起きています。しかも、枯れ葉も増えています。また、清掃員はその仕事を休むことなく続けています。ならば、空気の乾燥と風により、森の火災は一気に燃え広がることになるでしょう。
こういったメカニズムで起きるのがサイトカインストームだと考えていいでしょう。
そこで重要なのが、生体には次のような存在もいることです。
✓ 強力な天然の消火剤:プロテクチンD1とレゾルビンE1
✓ 解体業者:炎症を抑制するマクロファージ
✓ 清掃業者:塩
たとえは悪いかもしれませんが、太平洋戦争における日本を想像してください。
当時、日本は中国や東南アジアなど、戦場はあちこちにありました。そして、どんな戦争もそうですが、相手を打ち負かして終わるわけではありません。その後、現場のがれきを撤去したり、インフラを整備しなければ統治はできません。
生体内も同じで、炎症をきっかけに免疫反応が起きますが、それを積極的に収束させるシステムも存在します。
それが天然の消火剤であるDHAから生じるプロテクチンD1とEPAから生じるレゾルビンE1です。これらは、炎症の収束期から生じて血管から好中球の湿潤を抑制するとともに、炎症組織から好中球のクリアランス(排泄処理)を促進します。
これは、あらたな免疫細胞の集積を防ぎ、炎症性サイトカインの減少につながります。また、マクロファージによるダメになった組織の細胞処理も促進し、リンパ管への移行も促進するなど、炎症反応を積極的に収束させます。
つまり、DHAやEPAがなければ組織が正常に働ける環境に戻りません。アレルギーや頭痛がある人は、ある意味オメガ3不足もしくはオメガ6過剰により体内が「内戦状態」と言い換えてもいいのかもしれません。
まとめ
サラダ油や植物油脂、トランス脂肪酸などを排除し、DHAやEPA、塩を十分にとっていれば…
✓ DHAとEPAがフレキシブルに構造を変えて細胞膜の隙間を埋めることで「適度に」膜の流動性が低下し、ウイルス感染率を低下させることができる
✓ DHA由来のプロテクチンD1が細胞内で増殖した新型コロナウイルスの輸送を阻害することで出芽を防ぎ、結果的に増殖を抑えることができる
✓ DHA由来のプロテクチンD1とEPA由来のレゾルビンE1が炎症の収束期に働くことで、組織の修復が円滑にできる。また、DHAやEPAが直接的に炎症を鎮める働きをすることで、サイトカインストームによる重症化を防ぐことができる
✓ 塩をしっかりとり浸透圧が正常化することで、感染後の白血球や組織のゴミを適切にリンパ管に処理できる
最後に、とにかく慎重に行動しましょう。
重症化するのはわずかなようですが、それがあなたの大切な人なのかもしれません。
また、冬には第2波がやってくることでしょう。それまでに、あらたな情報をまとめ10月末にはお送りする予定です。
結局、こんな時にできることとは、当たり前の対処がすべてです。決して必殺技などありません。ご自愛ください。
鈴木邦昭