新型栄養失調!ビタミンB1不足 – 平成29年「国民健康・栄養調査」栄養素等摂取状況調査の結果

「おいおい、これじゃ脳がまともに働くわけないだろ!」

厚生労働省が発表した平成29年「国民健康・栄養調査」第 1 部 栄養素等摂取状況調査の結果を調べてみて、私はあらためて驚きました。例えば、ビタミンB1についての調査結果は次のようなものでした。

ビタミンB1の推奨量は以下のように小学生の高学年にもなれば1㎎以上になります。これくらいで、やっとふつうの生活ができるレベルの摂取量。なのですが、数字に強い人なら上の表と下の推奨量を比較して猛烈に驚いていることでしょう

逆に、数字に弱い人だとおそらく次のような反応でしょう。

ビタミンB1が足りていない人がいるんだ…

数字に強い人と弱い人では、それほどこの表を見た時の印象が違います。このページをご覧の方は、ほとんどの方が何らかの問題を抱えていると思います。できるだけわかりやすく説明しますのでお役立てください。

平均点とは?

平均点は何点だったの?

我が家の奥さんもそうだったのですが、子どもが中学や高校に通っているご家庭ではテストの度にこんな会話が繰り返されていることでしょう。まずは、この平均点について理解してください。

平均点で見えるもの。見えないもの。

例えば、子供がテストで80点をとってきたとしましょう。

私なら、子供が60~80点なら無条件で合格です。この点数ならそこそこ勉強した結果ですし、そもそも100点をとるような勉強をするとなると、おそらく80点のときの倍以上の努力が必要でしょう。私は、そのような努力をするヒマがあるのなら、本を読んだり運動したり、部活を頑張れという立場です。

まあ、それは置いといて、このテストの平均点が85点だったらどんな会話になるでしょうか?おそらく、「平均点以下じゃないの!」と思わず口にされている。逆に、平均点が70点なら「頑張ったね!」と安心しているのではないでしょうか?

では平均点について、もう少し詳しく見ていきましょう。

【ケース1】

子どもがテストで70点をとってきました。そんなテストは10人の子どもが受けて、それぞれ次のような点数でした。

10人の結果は、「0、5、10、70(←これが子供の点)、80、80、82、85、93、95」合計600点。

10人で割ると導かれる平均点は「60点」となります。

70点は平均以上ですが、上記のようにほとんどの子が8割以上とれるテストでした。つまり、一部の成績が悪い子が著しく平均点を下げていました。

さて、これでも「平均点以上じゃない!頑張ったわね」と、ほめてあげますか?

【ケース2】

今回のテストで子どもは70点をとってきました。そんなテストは10人の子どもが受けて、それぞれ次のような点数でした。

「50、52、54、60、60、60、61、61、70(←子供の成績)、72」

このテストの平均点は60点となります。

平均点より10点しか上回っていませんが、成績は上から2番目。しかも、ほとんどの子は50~61点しかとれないテストでした。

このように、同じ平均点で平均以上という結果でも、条件が違ってくるとまったく違った景色になることがお解りいただけたと思います。

【中央値と平均値】

次に、平均値と中央値についての理解です。

「平均値」は、テストでいうところの平均点。すべての数値を足して、数値の個数で割った値です。一方で中央値ですが、これは数値を小さい方から並べたときに、真ん中に来る値です。

実は、前述した平均点でお解りいただけたように、データーを読むとき、こういった値には得手不得手があります。

データが下のようにきれいな左右対称の山の形に分布していた場合は、平均値も中央値も同じになります。

問題になるのは、データーが非対称になるとき。例えば、下図のような場合では、平均値と中央値にズレが生じます。

テストの点数における「平均点」のように、平均値には「データーにおける代表」みたいな感覚がありますが、先ほどの例でご紹介した平均点のように、平均値には「極端な数値もひっくるめて判断してしまう」というデメリットがあります。

大きすぎる値や小さすぎる値が含まれると、平均値は大きな影響を受けます。一方で、中央値はそういった影響を受けません。上から数えても下から数えても同じ順位の数値が中央値です。大きな値や小さな値に極端なケースがあっても、それは無視されます。

ですが、想像できると思いますが、中央値はデーター全体の変化や比較をするにはムリがあります。例えば前述したケースでは中央値は80点ですが、

この数字だけ見ると「0.5.10」点のデーターが見えなくなります。

ビタミンB1摂取量

平均値と中央値を理解していただいた上で、厚生労働省が発表した「平成29年の国民健康・栄養調査報告」でビタミンB1について、まずは15~19歳について確認してみましょう。

15~19歳のビタミンB1摂取状況

15~19歳のビタミンB1摂取量は次の通りです。

ご覧の通り「中央値」は0.9です。推奨量は男が1.5、女が1.2ですから、中央値の人でもビタミンB1が不足していることがわかります。また、平均値は中央値より高いことから、どちらかというとビタミンB1摂取量は平均値1よりもが多い人がいると想像できます。

ですが、注目すべきは赤字で示した「標準偏差」です。

標準偏差から分かる見逃せない事実とは?

偏差値とは、平均点をとった人を50として、ある集団の中での位置を示す数値のことです。そのため、試験の偏差値で、受験生の集団の中での客観的な学力位置がわかり次の式で求めることができます。

偏差値=( 個人の得点-平均点)÷標準偏差×10+50

上記の式で耳慣れないのが「標準偏差」ですが、これは得点の散らばり具合を表す数値で、得点の散らばりが大きければ大きいほど、標準偏差も大きくなります。(下図 なだらかなカーブ)

偏差値が50より大きい場合には、同じ得点・平均点であれば、標準偏差が大きいほど偏差値は低くなります。また、偏差値50にあたる得点ならば標準偏差に関わらず偏差値は50で一定となります。さらに、標準偏差は平均点と同じく、試験や科目により毎回値が異なります。

例えば、Aさんが平均点50点のテストで60点とったとしましょう。このとき、(1) 標準偏差20と(2)標準偏差10の場合では偏差値=(個人の得点―平均点)÷標準偏差×10+50ですから、

(1)(60ー50)÷20×10+50=55

(2)(60―50)÷10×10+50=60

(1)は偏差値55。(2)は偏差値60と、同じ平均点と得点でも標準偏差により偏差値は異なることになります。

一般的なテストでは、ほとんどの人の偏差値は25 ~ 75の範囲に収まります。ということで、偏差値 70 ~ 75 程度であれば「非常に優秀」となります。

一般に(正規分布の場合)、偏差値60以上の生徒は全体の16%。偏差値70以上の生徒は全体の2%。偏差値75ともなると、0.62%です。私のお客様には偏差値が75を超える高校に通っている子供が何人かいますが、チョー優秀ということですね。

こういったことから、偏差値は客観的な学力の指標となることがわかります。問題の難易度や平均点に左右されることなく、偏差値は学力を把握する指標となります。

偏差値を理解していただいた上で、もう少し「標準偏差」についてのお話です。

標準偏差はデータのバラつきの大きさ!

標準偏差は以下の式で求めることができますが、重要なのはこの数値が「データのバラツキの大きさ」の指標であることです。

また、この数値には「68%95%ルール」があることです。

さて、この68%95%ルールとはいったいどんなものなのかご説明しましょう。

「68%95%ルール」とは?

前ページの公式にある「S」とは標準偏差の値ですが、「平均-1×S(標準偏差)」~「平均+1×S(標準偏差)」内にデーターが含まれる確率は68.27%になります。また、「平均-2×S」~「平均+2×S」内にデーターが含まれる確率は94.45%と、決まっています

上図を見ると、その傾向がわかると思いますが、この「65%95%ルール」をご理解いただいたところで、「国民健康・栄養調査報告」のビタミンB1を確認してみましょう。

ビタミンB1摂取状況 -平成29年「国民健康・栄養調査」

平成29年「国民健康・栄養調査」第 1 部 栄養素等摂取状況調査の結果から、まずは15-19歳のビタミンB1摂取状況を抜粋し、推奨量とともに表にしました。

男女とも中央値が推奨量約7割を下回るほどの摂取状況であることから、15-19歳では半数以上の人がビタミンB1不足状態であることがわかります。

68.27%ルールの確認

先のように標準偏差(S)を元に「平均ー1S」~「平均+1S」を計算すると次のようになります。

15-19歳のビタミンB1

男性の中央値は1.04です。また、標準偏差は0.55。さらに、「平均±S」は次の通りです。

・「平均ー1s」:「1.14-0.55」=0.59
・「平均+1S」:「1.14+0.55」=1.69

女性の中央値は0.77です。また、標準偏差は0.37.さらに、「平均±S」は次の通りです。

・「平均ー1s」:「0.85-0.37」=0.48
・「平均+1S」:「0.85+0.37」=1.22

いかに深刻な状況なのか?お分かりになるでしょうか。この段階で、約7割の子どもたちがビタミンB1不足であることがわかります。

次に、「平均±2S」で95.45%ルールが当てはまります。また、中央値が男女とも推奨量の7割程度であることから、男女とも「平均-1S」~「平均-2S」の間に一定数がいます。また、それ以下の人もいます。このことから、おおよそ約8割以上の子どもがビタミンB1不足であることがわかります。

そもそも、ビタミンB1の摂取量中央値(男1.04、女0.77)が問題なのですが、一定数の男は0.59以下、女は0.48以下という惨憺たる摂取量です。

正直、これ以下のビタミンB1摂取量ではなんらかの障害、例えば発達障害や知的障害、適応障害、精神疾患を疑われるような学力や言動(暴れる、暴言、非行、ひきこもりなど)を繰り返している可能性が高いでしょう

カンタンに言えば、次のような写真の食事で栄養が十分にとれますか?ということです。

ビタミンB1不足はどんな意味をもつのか?

速度が低い時は電気で動くモーターを使って走行し、燃費の効率が良い速度になった時には、ガソリンで動くエンジンに切り替え走行をする。

このように、ガソリンで動くエンジンと電気で動くモーターの2つの動力源を備えているのがハイブリッドエンジンです。同じように、脳や体の細胞も大きく次のふたつを動力源として備えて効率よくエネルギーを作り出しています。

 

・解糖系 – 1つのブドウ糖から2つのエネルギーを生産
・TCAサイクル(クエン酸回路) – 1つの糖から最大38個のエネルギーを生産

このふたつの大きな違いは、解糖系が酸素を使わないでエネルギーを作る一方で、TCAサイクルは酸素を使うシステムであることです。

また、この酸素を使うシステムはエネルギー生産効率がとても高く、解糖系の十数倍ものエネルギーを作ることができます。そして、この酸素を使うシステムの主役が皆さん一度くらいは名前を聞いたことがあるミトコンドリアです。

実は、ハイブリッドカーがガソリンと電気モーターを連携させているのと同じように、解糖系とTCAサイクルも連携して働いています。

次ページの図をご覧ください。細胞の中にミトコンドリアは住み着いていますが、細胞内の解糖系と次のように連動しています。

まず、細胞にとり込まれたブドウ糖は解糖系で代謝されてピルビン酸に変換されます。そして、この過程で2つのATPを得ることができます。

続いて、このピルビン酸がミトコンドリアにとり込まれることになりますが、それにはふたつの条件を満たさなければなりません

そのひとつが酸素の存在で、ピルビン酸は酸素があってはじめてミトコンドリア内に入ることができます。(図 青字)逆に、酸素がなければ乳酸に変換され血流に乗って肝臓に運ばれ、ここで代謝されてブドウ糖(グルコース)に変換されます。

次に、ミトコンドリア内に入れたピルビン酸ですが、そのままではTCAサイクルに入ることはできません。ピルビン酸はビタミンB1と出会うとアセチルCoAに変換され、やっとTCAサイクルに入ることができます

つまり、ビタミンB1が不足すればTCAサイクルが周らないことになります。

先のように、解糖系は1つのブドウ糖から2つのエネルギーしか得ることができません。その10倍以上効率が良いTCAサイクルが周らないわけですから、エネルギー不足は明らかでしょう。

脳は大食漢であるという事実は?

脳は体重の2%の重量である一方で、摂取エネルギーの20%以上を使うほどの大食漢です。また、脳はとても独りよがりな臓器で、エネルギー源のブドウ糖が不足すると血流をコントロールして自らの分を確保します。つまり、体の血流を抑えてでも脳にブドウ糖が流れ込むようにします。

しかし、拒食症など一部の例外を除いてブドウ糖が不足している人などいません。そのため、ビタミンB1不足はそのまま脳のエネルギー不足につながると考えていいでしょう

脳のエネルギー不足はどんな問題につながるのか?

私の経験上、脳のエネルギー不足は次のようなことにつながります。

まず、単純に学力が低下します。記憶力や理解力が悪いのですから、いくら勉強をしても頭に入ってきません。また、そもそもエネルギー不足で集中力がなくなるでしょう。

それ以上に問題になるのが、脳のエネルギー不足は倫理観がなくなったり、理性的な判断ができなくなることです。例えば…

子ども:家庭内暴力やゲーム依存、非行、いじめ、情緒不安

 

大人:モラハラや虐待(ネグレクト)、クレーマー、アルコール依存、買い物依存、精神疾患

会社ならパワハラやセクハラなどのハラスメント、仕事が長続きしないで離職転職を繰り返すことにつながるでしょう。つい先日は、「この仕事を忘れているから来週までにやっといて!」と部下に伝えたら、部下が「パワハラを受けた!」(本文はもっと長い)と社内一斉メールを送り大問題になったというお話をいただきました。

もちろん、こういった問題がビタミンB1不足だけでおきるわけではありません。しかし、ビタミンB1が不足するような食生活なら、他の栄養素も不足していることは想像に難くありません。

年代別のビタミンB1摂取状況からわかること!

先ほどは15‐19歳におけるビタミンB1摂取状況をご紹介しました。続いて、7‐14歳と20‐29歳の摂取状況を男女別にまとめてご紹介しますが、数値の微妙な違いにお気づきになるでしょうか?

 

・男女とも7-14歳より15-19歳の標準偏差が大きくなっている

・女性は7-14歳より15‐19歳のビタミンB1摂取は平均値と中央値がともに低くなっている

・男女とも20‐29歳のビタミンB1摂取量が減少しています

・男女とも、15‐19歳より20‐29歳の標準偏差が小さくなっている

 

まとめ

7‐14歳より15‐19歳のビタミンB1は、男女とも標準偏差が大きくなっています。また、女性は平均値と中央値共に低くなっています。さて、これが意味することがお分かりになるでしょうか?

1-14歳は学校給食を食べる年齢です。そして、学校給食は家庭の食事では十分な栄養がとれないことを考慮し、給食を作ったときにビタミンやミネラルの粉を添加しています。一方で、高校に上がれば昼食はお弁当です。

また、長期の休み明け、とくに夏休み明けに自殺が多いこと。起立性調節障害や発達障害と診断される子供が増えること。不登校が増えることはよく知られた事実です。

したがって、家庭の食事内容はそれほど栄養の標準偏差が大きいことがわかります

また、20歳以上の摂取量は減少しています。それも、7‐14歳の摂取量より減少しています。また、標準偏差は15‐19歳よりも小さくなっていますが、7-14歳よりも大きな数値です。さて、この結果をどう見るのか?

私は、高校を卒業するとそれほど食事内容がいい加減になるのだと想像しています。総じていい加減な食事になるため、標準偏差も15-19歳よりも小さいが7-14歳よりも大きな値となるのでしょう。

また、ビタミンB1が不足するような食事内容なら、他の栄養素についても大幅に不足していることは容易に想像できます。次回は、そのほかのビタミンやミネラルについてご紹介します。

「賢い脳の作り方!」を実践された〇〇高校のお母さん(高3)の感想をご紹介します!

この記事は、ある高校のPTAのお母さんからいただきました。やったことは10日間チャレンジです。

たったこれだけのことで人は変わります。そして、記事でもわかるように、誰一人として私の話を信じてはいませんでした。信じてはいなかったが、試したら結果が出た。それほど、私の話は世間の常識とはかけ離れているようです。でも、試す価値があることだけはマチガイない。

少なくとも私はそう確信があります。

もし、何かの悩みがあるのなら10日間チャレンジをお試しください。

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