リン過剰摂取にご注意を!加工食品や食品添加物、チーズをよく食べるなら一読ください
沈黙の臓器。
そう聞けば肝臓を思い出すヒトが多いと思いますが、腎臓もそのひとつ。腎臓はその機能を著しく低下しても症状が出にくく、腎機能が50%以下になるまで目立った症状が現れないという特徴があります。
現実に、人工透析患者は2020年くらいまで一貫して増えていました。ただし、それ以降は亡くなる方が増えたため(あのワクチンのせいですね…)、微減となっているようです。
今回、この沈黙の臓器の話をする理由は、多くのヒトが未だに添加物だらけの食生活を続けているから。
添加物は体に悪い。
そう聞いても、なかなかピンとこない。
そんなヒトたちこそ、最後まで一読されることをお勧めします。
添加物と成人病
一部の添加物の過剰摂取や、添加物を多く含む「超加工食品」の過剰な摂取は、成人病(生活習慣病)のリスクを高める可能性が指摘されているという話は、誰もが一度くらい耳にしたことがるでしょう。
今ほどではありませんが、インスタントラーメンやレトルトカレーが普及しはじめた1970年代より、以下の論文の通り高血圧や心臓疾患、脳血管障害、糖尿病など成人病が増え続けていることを、まずはご確認ください。
図5は 傷病別にみた受療率の推移で,高血圧,心臓疾患,脳血管障害,糖尿病 などで受診する患者が逐年増加していることがわかる。 これら増加傾向にある疾病は,いずれも成人病とよばれるもので,癌を除いてはすべて過剰栄養や栄養素のアンバ ランスに関係の深いものばかりである。

・食事と疾病 阿部 達夫 1977年 30 巻 6 号 337-344
腎臓疾患と成人病
いつも言っていますが、病名とは記号にすぎません。しかし、ほとんどのヒトはそれに氣づかずにいるため、糖尿病や高血圧が腎臓疾患と密接に関係していることを知りません。
糖尿病や高血圧は腎臓の血管にダメージを与え、慢性腎臓病の原因となります。
その際、特に注意が必要なのが、食事における過剰なリンの排除です。
長期透析患者においては、透析療法によるリン除去は不十分であるために、高リン血症が出現する。これらの患者におけるリン蓄積は、我々が想像もしないような様々な病態を引き起こすことが明らかにされた。
さらに、リン代謝異常を伴う遺伝性疾患の解析からもリン代謝系が解明された。
その結果、リン代謝は慢性腎臓病、心血管疾患や寿命制御に深く関係することが明らかにされた。
・無機リン酸代謝調節における分子栄養学研究 宮本 賢一 2011年 64 巻 3 号 137-149
では、なぜリンが過剰になると問題が生じるのか?
体内のリン、その85%は骨や歯に蓄積します。しかし、過剰なリンが生じると、それが血管などに蓄積(沈着)します。
過剰なリン負荷が生じると本来は骨組織に蓄積すべきリンが、カルシウムと同様に血管などの軟組織に蓄積される。
・無機リン酸代謝調節における分子栄養学研究 宮本 賢一 2011年 64 巻 3 号 137-149
当然ですが、それはリンの排出口である腎臓の血管により顕著となります。そのため、リンの過剰摂取は腎臓疾患の原因となります。
リン制減食は通常、慢性腎不全者に供され、その目標はリン摂取を1日当たり700-1,000㎎に制限することにある。すべての食物はリンを含んでいるため、この目標を達成することは困難である。
なぜなら、リン制減食は慢性腎臓病の進行を抑制するが、リンを制限した食事はおいしくなく、このことが食事療法の継続を困難にしている。
また、リンはリン要求性の食欲と深く関係している。さらに、リンを制限した場合は、高たんぱく質食品やファーストフードのような加工食品を摂取することができない。
末期腎不全患者や透析患者に見られる高リン血症は、血管などの異所性石灰化を促進させ、患者の予後を左右する重要な問題である。(中略)
食品表示規則は最近、食品のリン量を載せることを求めておらず、このことが食品や添加物からのリン給搾取量の評価を困難にしている。食品中の正確なリン量(リンの種類)に関する情報が、低リン食摂取を実現させ、高リン血症や異所性石灰化を効果的に予防するために必要である。
・無機リン酸代謝調節における分子栄養学研究 宮本 賢一 2011年 64 巻 3 号 137-149
加工食品中に含まれるリン
なぜ、加工食品を食べてはいけないのか?
その理由は単純に加工食品にはさまざまな添加物が含まれるからです。なかでもリンはリン酸塩として加工食品中に含まれるだけでなく、pH 調整剤や結着剤の用途で種々のリン酸塩が添加されています。
つまり、加工食品はリン過剰摂取の元凶です。
加工食品のうち日常よく使用されている食肉・魚肉加工食品,清涼飲料水,小麦粉製品,チーズなどには変色や変質の防止,風味改良,保水性維持などの目的で,縮合リン酸塩が添加されていることが多い。
このような加工食品を多量に摂取することにより,リンの過剰摂取が懸念され,それによって子供の骨折が増加したのではないかと疑われている。
・子供のカルシウム, リン摂取の実態 岡崎 光子, 広川 いさ子, 他 1985年 38 巻 3 号 167-175
リン過剰摂取と骨折
前述の通り、過剰なリンは動脈硬化を引き起こします。そして、そのメカニズムはカンタンで、過剰なリンはカルシウムと結合し血管壁に沈着するからです。
また、リンは体のPHを調節する働きがありますが、過剰なリンで体液が酸性に傾むくため、体液を健康を維持する弱アルカリ性に戻す必要があります。
その働きを担うのがカルシウムで、過剰なリン摂取は骨からカルシウムが溶け出すことになります。また、それにより骨折や骨粗鬆症のリスクが高まることは説明するまでもないでしょう。
本研究において、28日間の高リン食摂取が成熟雄ラットの大腿骨の骨密度を低下させることが明らかになり、骨折や骨粗鬆症予防のため適切なリン摂取量の重要性が示された。
・高リン摂取が成熟雄ラットの骨密度へ及ぼす影響について 山田 麻子, 野田 聖子, 他 2025年 76 巻 9 号 467-473
健康なヒトでもリンの過剰摂取を防ぐ必要がある!
冒頭に記した通り、腎臓は沈黙の臓器であり、腎機能は半分以上を失ってはじめて症状が現れることがほとんどです。慢性腎不全ではリン制限が必要とされますが、以下の通り腎機能障害の有無に関わらず過剰摂取は誰もが防がなければ健康は維持できません。
血清リン濃度の上昇は,血管の石灰化,動脈硬化および頸動脈内膜中膜肥厚(Intima-mediathickness: IMT)を誘発し,心血管疾患(Cardiovascular disease: CVD)の発症に関与することが,慢性腎不全(Chronic kidneydisease: CKD)患者のみならず健常者においても報告されている。したがって,リンの過剰摂取を防ぐことは,腎機能障害の有無に関わらず重要である。
・若年者における24時間蓄尿法によるリン摂取量の把握およびリン摂取量に影響を及ぼす食品構成の評価 佐久間 理英, 太田 紘之, 新井 英一 2017年 75 巻 5 号 131-140 より引用
有機リンと無機リン
リンには有機リンと無機リンがあり、前者の吸収率が40-60%であるのに対し、無機リンの吸収率は90以上です。そして、加工食品で利用されるのは無機リン。
加工食品が広く普及したことにより,無機リンの摂取量増大が問題視されている。西欧諸国では,総リン摂取量の 5 割は食品添加物由来であるという報告があり,我が国においても食品添加物がリン
摂取量増大に寄与している可能性が高い。
・若年者における24時間蓄尿法によるリン摂取量の把握およびリン摂取量に影響を及ぼす食品構成の評価 佐久間 理英, 太田 紘之, 新井 英一 2017年 75 巻 5 号 131-140 より引用
ならば、加工食品を摂ればリン過剰となるのは自然な話です。
なかでもプロセスチーズは…
プロセスチーズは特に大量のリン摂取源となるようですね。乳製品の摂取自体がお勧めできませんが、食べるならナチュラルチーズを選択することをお勧めします。
市販のナチュラルチーズ 5種とプロセスチーズ23種を購入し、縮合リン酸を分析した 。 結果を表8に 示した。

ナチュラルチーズには、ほとんど縮合リン酸は含まれていなかった 。プロセスチーズは 、とろけるタイプや裂けるタイプのようにあまり含まれていないものから5,000μglg以上含まれているものまで あったが、多くは3,000㎍/g以上含まれていた。
・縮合リン酸塩の1日摂取量とそれに影響する食品 石橋 正博, 山田 傑, 他 1996年 2 巻 2 号 93-96
腎機能低下の要因
再度強調しますが、腎障害がなくてもリン制限は必要です。以下のは動物実験ですが、健康なラットでも高リン食で腎臓石灰化が起きているという事実を確認してください。
実験 1 の結果,重合リン酸塩餌料給餌群において,重合度 2 のピロリン酸 Na を給餌した群でトリポリリン酸 Na およびテトラポリリン酸 Na 給餌群と比較して腎臓石灰化度合いがそれぞれ有意な増加および増加傾向(p = 0.09)が見られた。
また動物実験 2 でも動物実験 1 と同様に,ピロリン酸 Na を給餌した群で,リン酸水素二 Na 給餌群よりも腎臓石灰化度合いの高い傾向が見られた(p = 0.06)。
一方,ピロリン酸 Na 給餌群は,動物実験 1 および 2 ともにラットの終体重の低下が見られた。そのため,ピロリン酸 Na の過剰給餌による腎臓石灰化は,ラットの成長および餌料摂取量の低下による影響を受けている可能性がある。
このことから,餌料を自由摂取とした条件の場合,本研究で使用した正リン酸塩および重合リン酸塩の中で,ピロリン酸 Na の給餌がラットの腎臓石灰化に及ぼす影響がより重度であることが示唆された。
・重合度の異なるリン酸塩の給餌がラットの腎臓石灰化およびミネラル出納に及ぼす影響 細見 亮太, 中澤 知奈美, 他 2021年 29 巻 4 号 389-400 より引用
なぜ、加工食品にリンが大量に使われるのか?
私もその理由が謎だったのですが、なぜ加工食品には大量のリンが使用されると思いますか?
その理由はとても単純かつ明快でした。
リンを制限した食事はおいしくなく、このことが食事療法の継続を困難にしている。また、リンはリン欲求性の食欲と深く関係している。さらに、リンを制限した場合は、高たんぱく質食品やフアーストフードのような加工食品を摂取することが出来ない。
・無機リン酸代謝調節における分子栄養学研究 宮本 賢一 2011年 64 巻 3 号 137-149
そう、単純にリンを制限した食事は〝まずく″なるようです。また、リン欲求性の食欲があることから、いわゆる〝やみつき″になるようファーストフードや外食産業、加工食品などで利用されています。
その上でリンは加工食品の風味・食感・保存性を高めるために使用されています。
具体的には、食肉加工品では保水性を高めて柔らかく、乳化剤としてプロセスチーズをなめらかにしたり、pH調整剤として腐敗を防いだり、膨張剤の助剤としてお菓子をふんわりさせることができます。
このことから、リンの過剰摂取を防ぐには…
ひとりひとりが氣づき、自らの意思で加工食品を食べないという選択をする以外に方法は無いことがお分かりいただけたことでしょう。
我が国で見られる食の欧米化や加工食品の摂取量増大は,リンの摂取量を増大させている可能性が高い。(中略)
念のため確認してください!
加工食品とは、以下の論文の通りインスタント食品や菓子類、飲料に限らず、惣菜や弁当も含むことを忘れないでください。
健康な男女32名(男性14名,女性18名),平均年齢22.1±1.5(平均値±標準偏差)歳を対象に,24時間蓄尿,秤量法による食事記録を行った。(中略)
【結果】対象者のリン摂取量は平均 951±179 mg/day であり,最小値は 564 mg/day,最大値は 1,445 mg/day であった。リンをリン食事摂取基準における性・年齢区分別の目安量以上に摂取している者の割合は,対象者全体の70.8%であった。
リン摂取量およびエネルギー当たりのリン摂取量の結果から,リンの多い摂取量に寄与する食品群として,肉類,乳類,嗜好飲料類が該当した。また加工食品では,インスタント食品,菓子類,嗜好飲料(炭酸),調理済みそう菜,弁当がリンの多い摂取量に寄与していた。
【結論】高リン摂取を防ぐためには,肉類・乳類および嗜好飲料類を適量範囲内で摂取するとともに,インスタント食品,菓子類,嗜好飲料(炭酸)および調理済みそう菜,弁当などの加工食品の摂取量に留意すべきであると示唆された
・若年者における24時間蓄尿法によるリン摂取量の把握およびリン摂取量に影響を及ぼす食品構成の評価 佐久間 理英, 太田 紘之, 新井 英一 2017年 75 巻 5 号 131-140
まとめ
体内のリンが過剰となると腎臓障害が起きる。
その理由のひとつは、腎臓の血管壁にリンとカルシウムが結合して沈着。そのため、血管の動脈硬化が起き、正常な腎機能が失われるから。
しかし過剰なリンによる障害はもうひとつあり、腎臓の尿細管細胞では、高リン環境がミトコンドリアの傷害を引き起こすことが研究により示唆されています。
Google AI より引用
また、現代人の多くは紫外線防止が好きですが、そんなヒトほどリン過剰摂取を防ぐことは重要です。以下を参考にしてください。
リンは,カルシウムとともに骨を形成するだけでなく,細胞膜リン脂質,核酸,ATP などの高エネルギーリン酸結合,リン酸化によるシグナル伝達など生体構成成分や生体内の反応に必須の栄養素である.
このため,血清リン濃度は腸管からのリン吸収,骨や組織への移行,腎臓での再吸収を調節することにより一定範囲に維持されている.このリンの調節を行うのが,副甲状腺ホルモン(PTH),活性型ビタミン D,fibroblastgrowth factor 23(FGF23)である.(中略)
食事からのリンの過剰摂取は PTH や FGF23 の分泌を増加させ,リンを制限するとこれらの分泌は低下する.古くより,リン制限食では活性型ビタミン D の産生が増加し,腸管でのリン吸収が増加すること,一方,リン過剰摂取では,活性型ビタミン D 産生が低下することが知られている.
・慢性腎臓病におけるリンとビタミン D 竹谷 豊 2016年 90 巻 7 号 357- より引用




