多嚢胞性卵巣症候群と診断されたなら要注意!出生児の発達障害リスクとの関係とは…?
多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん:PCOS)と診断された女性にとって、この内容はとても重要です。
多嚢胞性卵巣症候群は、卵巣で卵胞が育ちにくく(卵胞での成長が途中で止まり)、たくさんの小さな卵胞(嚢胞:のうほう)が卵巣内にとどまり排卵がうまく行われない病気です。
生殖年齢の女性の約5〜10%に見られる比較的一般的な疾患で、生理不順や無月経、不妊の原因となることはほとんどの女性がご存じでしょう。
ですが、多嚢胞性卵巣症候群の女性の出生児へ与える影響をご存じの方は〝ほぼ″いらっしゃらないと思いますのでご紹介します。
母親のPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と出生児の発達障害リスクの関係
実は、母親の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と出生児の発達障害リスクには相関があります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の母親の出生児は発達障害のスクリーニング検査で不可となるリスクが高いことがアメリカで実施された研究で明らかになりました。
・母体の多嚢胞性卵巣症候群と初期の子どもの発達 Human Reproduction, 33(7)2018, 1307–1315
また、同調査で多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性は不妊治療の後、子どもを授かっているケースが多いこともわかりました。
PCOSの母親は、PCOSでない母親に比べて、不妊治療を受けている可能性がはるかに高かった。
・母体の多嚢胞性卵巣症候群と初期の子どもの発達 Human Reproduction, 33(7)2018, 1307–1315
後述しますが、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因の多くはリノール酸過剰摂取にあります。
母親が多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された場合、子どもの幼少期の発達遅延と関連があることがわかりました。この関連性の強さは、男の子よりも女の子の方が一貫して高いことがわかりました。治療状況別に調べたところ、未治療のPCOSと報告した母親の子どもは、治療を受けていると報告した母親の子どもよりもリスクが高いことがわかりました。
・母体の多嚢胞性卵巣症候群と初期の子どもの発達 Human Reproduction, 33(7)2018, 1307–1315
「30日で朝「スッキリ目覚める」体質にする方法!」でも指摘しましたが、リノール酸過剰摂取は体内を慢性炎症状態にします。また、炎症が生じると必ず浮腫みが生じます。さらに、体内の水分量は男性が60%程度である一方で、女性は55%程度。
それ故に、浮腫みの影響は男性より女性が受けやすくなります。事実、起立性調節障害は男子よりも女子に多く見られます。一般的な男女比はおよそ「男子1に対して女子1.5〜2」とされています。
同様に、浮腫みが脳に与える影響は女子がより受けやすくなることで男の子よりも女の子の方が一貫して高くなると私は考えています
自閉症リスク(ADS)
スウェーデンの医療登録簿のICD-9コードに基づく連結データを使用した大規模な集団ベースの症例対照研究では、PCOSの母親の子どもはASDのリスクが高いことがわかった。
・母体の多嚢胞性卵巣症候群と初期の子どもの発達 Human Reproduction, 33(7)2018, 1307–1315
注意欠如・多動症(ADHD)や発達障害
別の大規模なスウェーデンの研究では、母体のPCOSと子どものADHDの診断との関連性がわかった。
イタリアで行われた小規模な縦断的コホート研究では、PCOSの女性の子供は広汎性発達障害のリスクが高いことがわかった。
PCOSの女性の子供は、PCOSでない女性の子供と比較して、4~11歳の子供の自閉症特性に関する親報告式質問票である自閉症スペクトラム指数(AQ-C)の合計スコアが高かった。この発見は、息子よりも娘の方が強かった
・母体の多嚢胞性卵巣症候群と初期の子どもの発達 Human Reproduction, 33(7)2018, 1307–1315
では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と出生児の発達にはどのような関係があるのでしょうか?
多嚢胞性卵巣症候群の主要因はリノール酸過剰摂取にあった!
「乳がんと診断されるヒトが年間約97,000人もいることをご存じでしたか?」では乳がん発症の主因がリノール酸過剰摂取にあること、「PGE₂の過剰産生が体に与える影響とは…?リノール酸過剰摂取は今すぐ止めましょう!」でもアレルギーや足の浮腫み、頭痛、生理痛、起立性調節障害など様々な弊害をご紹介しましたが、多嚢胞性卵巣症候群の原因もリノール酸過剰摂取にあります。
本研究では、まずマウスで異なるLA(リノール酸)濃度がPCOS関連の表現型に及ぼす影響を観察する実験を行いました。結果によると、中濃度および高濃度のLAはマウスにPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)様の変化を引き起こし、発情周期の乱れ、多嚢胞性卵巣、および高アンドロゲン血症を呈した。
繰り返しになりますが、以下でご紹介した疾患だけでなくリノール酸過剰摂取による弊害は多岐に渡ります。
・「乳がんと診断されるヒトが年間約97,000人もいることをご存じでしたか?」
・「PGE₂の過剰産生が体に与える影響とは…?リノール酸過剰摂取は今すぐ止めましょう!」
その理由も簡単で、リノール酸過剰摂取は体内で慢性炎症状態をもたらすからです。そのため、以下の通りリノール酸過剰摂取は認知障害や神経発達異常、大腸がん発症などの原因にもなります。
2023年には、科学者らはLA摂取と認知障害の間に正の相関関係があると報告した。
2016年には、1968年から1973年にかけて実施されたミネソタ冠動脈実験の未発表文書と生データの再分析により、不完全に発表された結果が飽和脂肪をLAが豊富な植物油に置き換えることの利点を過大評価することにつながったことが判明した。
LAは神経発達異常、脳炎症、肥満、大腸炎、大腸がんに関連しているという証拠が増えている
以下でも、リノール酸濃度の上昇に伴い多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がより顕著だと発表されています。
イラン人女性を対象とした横断研究では、「高アンドロゲン血症+稀発月経/無月経+多嚢胞性卵巣形態(H+O+POM)」と診断されたPCOSの女性は、他の表現型(基準を満たしたのは2つのみ)の女性よりも平均エネルギーおよび脂肪摂取量が多いことがわかりました。
これは、LA濃度の上昇に伴いPCOS表現型がより顕著になったという我々の結果と一致しています。
2022年にスペイン人女性を対象とした症例対照研究で、「H+O+POM」で特徴付けられるPCOS表現型は多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いことと関連しており、n -6脂肪酸のレベルが高いことと有意に相関していることがわかった。
正常な成人女性の1日のエネルギー必要量は2000kcalである。
中国と米国の用量換算式によると、マウスで使用された中用量と高用量のLAは、推奨されるLA摂取量の上限に近い。したがって、我々の動物実験の結果は、非常に実用的な意義がある。
我々の動物実験の結果は、n -6脂肪酸の最大の供給源として、LAの摂取量の増加がPCOSの中核表現型を発症するリスク因子になり得ることを直接的に示しました。
なぜ、出生児の発達障害リスクが高くなるのか?
本当の妊活! : 子宝を望むすべてのご夫婦へ!でも指摘しましたが、母体におけるリノール酸濃度は胎児脳の成長に大きな影響を与えます。
胎児脳の成長
脳の主役は情報伝達を担うニューロン(神経細胞)ですが、その働きを支えるアストロサイトやオリゴデンドロサイトと呼ばれる細胞も存在します。
・ニューロン:情報伝達の働きを担う
・オリゴデンドロサイト:ニューロンに巻き付き(ミエリン)絶縁体を形成する。これにより情報伝達が劇的に早くなる。※ 絶縁体が無い時の情報伝達スピードは徒歩レベルだが、あると新幹線並みとなる


・アストロサイト:ニューロンに栄養を与える乳母役
実は、これらの細胞の成長時期には下図のような違いがあります。


・ニューロン:出生までに成長を終える
・アストロサイト:出生時までに少しずつ成長し、誕生後にピークを迎えて少しずつ成長していく
・オリゴデンドロサイト:出生直前に成長が始まるが、そのほとんどが出生後に産生される
リノール酸が脳細胞に与える影響
実は、ニューロンとアストロサイト、オリゴデンドロサイトはどれも神経幹細胞から産生されます。
また、リノール酸過剰摂取状態は、食事中のオメガ6脂肪酸量が多く、α-リノレン酸やDHA、EPAといったオメガ3脂肪酸摂取量が少ない状態となります。これは以下の「低 ω-3/高ω-6」に当たります。
胎仔脳における組織解析を免疫染色法により行ったところ、高 LA/ 低 ALA飼料を摂取した妊娠マウスの仔では大脳皮質全体の厚さが減少することが分かった。
このとき、神経幹細胞層(Pax6陽性細胞層)に変化は認められず、神経細胞層(β 3-tubulin 陽性細胞層)の厚さが選択的に減少していた。
また、さらに発生を進ませた生後 10 日目の新生仔マウスの大脳皮質においても、神経細胞層の厚さの減少が確認され、これらの表現型が胎生期における一過的なものではないことが確かめられた。
また、いずれのステージにおいても、脳の脂肪酸組成における ARA の増加および DHA の減少が確認された。以上の解析から、妊娠マウスにおける高 LA/ 低 ALA 飼料摂取は、仔の大脳皮質において神経幹細胞の数に影響を及ぼさずに神経細胞産生を阻害することが明らかになった。
・脳形成における必須脂肪酸の役割 酒寄 信幸, 大隅 典子 2018年 27 巻 1 号 14-20
脳に存在する必須脂肪酸(オメガ6やオメガ3)はアラキドン酸(オメガ6)とDHA(オメガ3)です。また、アラキドン酸はリノール酸から産生されますし、リノール酸過剰摂取なら過剰なアラキドン酸が脳に入ります。
さらに、DHAはα-リノレン酸からEPAを介して産生されますが、日本人は魚から直接DHAを摂取するケースがほとんどです。
「低ω-3/ 高ω-6 飼料を摂取した妊娠マウスの仔では大脳皮質原基の厚さが減少していることが分かった.
このとき,神経幹細胞層に変化は認められず,ニューロン層の厚さが選択的に減少していた.」
このことから、過剰なリノール酸摂取がニューロンの産生に悪影響を与えていることが想像できます。
さらに発生を進ませた生後 10 日目の新生仔マウスの大脳皮質においても,DHA の減少,ARA の増加,およびニューロン層の厚さの減少が確認され,これらの表現型が胎生期における一過的なもの
ではないことが確かめられた.
以上の解析から,妊娠マウスにおける低ω-3/ 高ω-6 飼料摂取は仔の大脳皮質においてニューロン産生を阻害することが明らかになった.
続いて,上述した組織異常を引き起こした発生学的メカニズムを明らかにするため,マウス胎仔脳から神経幹細胞を培養して分化能を解析した.
すると,低 ω-3/高ω-6 飼料を摂取した妊娠マウスの仔の神経幹細胞から分化するニューロン数が減少していた.(中略)
アストロサイト産生についても解析したところ,分化するアストロサイト数は増
加していた.また,胎仔脳組織においてもアストロサイト数の増加が確認され,ニューロンの代わりにアストロサイトが産生されたことが分かった.
以上から,低ω-3/ 高ω-6 飼料摂取によって神経幹細胞の neurogenic-gliogenic 分化運命転換が早期に起こり,大脳皮質のニューロン数の減少につながったと考えら
れた.
・ここまで明らかになったω3脂肪酸 「脳の発生・発達におけるDHAの役割」 酒寄 信幸, 大隅 典子 2017年 91 巻 9 号 547-554
まとめ
要は、リノール酸過剰摂取は胎児脳でニューロン産生を阻害する一方で、アストロサイトの産生を促進するという話です。
情報伝達の主役が減れば、(脳の)発達に影響が出るのは自然なことでしょう。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性は、出産後もリノール酸過剰摂取(低ω-3/ 高ω-6)するであろう食事を続けることでしょう。ならば、母乳中や離乳食でもリノール酸過剰かつオメガ3摂取量不足は続くことになります。
DHAはオリゴデンドロサイトの分化・産生を促進しますから、その不足によりミエリンの形成は不十分となることでしょう。(ミエリンの巻き付き数は個人差があります)


以上のことから、リノール酸過剰摂取が多嚢胞性卵巣症候群の原因であり、そんな女性の出生児に発達障害リスクが高くなる理由も同様であることがお分かりいただけたことでしょう。
「多嚢胞性卵巣症候群」と「不妊」、「出生児の発達」が繋がることがご理解いただけましたか?
また、「乳がんと診断されるヒトが年間約97,000人もいることをご存じでしたか?」や「PGE₂の過剰産生が体に与える影響とは…?リノール酸過剰摂取は今すぐ止めましょう!」から、ほとんどの病気を惹起しているのがリノール酸過剰摂取にあることも容易に想像できたと思います。
最後に、子宝を望むすべての女性に 本当の妊活! : 子宝を望むすべてのご夫婦へ! をお役立ていただければ幸いです。






