ネオニコチノイド系殺虫剤の日本人における曝露実態

ネオニコチノイド系殺虫剤の日本人における曝露実態 石塚 真由美 2018年 45.1 巻 S5-3

ネオニコチノイド系殺虫剤(ネオニコチノイド)は、現在世界で広範囲に使用されている農薬の一つである。

ネオニコチノイドは浸透性であり、根や葉面、実に施用すると、植物全体に行きわたり、殺虫効果が必要とされる成長期の葉や実の表面だけでなく収穫期の可食部にも移行し残留する。そのため水洗により取り除くことができず、摂食によりネオニコチノイド大部分が体内に取り込まれ、生物活性のある原体または一次代謝物として排泄される。

ネオニコチノイドに関し、哺乳類を含む脊椎動物に対する曝露影響については未だ議論が続いている。

これまでの動物を用いた投与実験の結果では、ネオニコチノイドの高濃度曝露はニコチン性アセチルコリン受容体刺激によりニコチン中毒様症状をきたすが、少量では無症状で、持続曝露による中毒や胎内曝露による発達神経障害の危険性はないとされてきた。

しかし、2012年にネオニコチノイドが哺乳類の神経細胞に対しても毒性を有することが見いだされ、その後、NOAELレベルの場苦慮寮で、高等脊椎動物の行動や生殖器系に毒性が生じる可能性が報告された。

一方で、現在、ヒトがどのようなネオニコチノイドにどの程度日常的に暴露されているのか、正確に分析したデータは少ない。そこで本研究では、ネオニコチノイドによる感受性が高いと考えられる小児(3歳~6歳)から尿を採取し、尿中のネオニコチノイドおよびその代謝物を測定することで、曝露評価を行うことを目的とした。

分析した結果、thiaclopridは検出頻度が30%程度であり、濃度は<LOD~0.13㎍/Lであった。

この頻度と濃度は、dinotefuran(頻度、48~56%:濃度、<LOD~72㎍/L)やN-dm-acetamiprid(頻度、83~94%:濃度<LID~18.7㎍/L)など今回検出された他のネオニコチノイドに比べて低い値であった。

次に、尿中濃度から曝露量を推定した結果、分析対象とした全ネオニコチノイドの母黒量は最大640㎍/日に達した。一方、これらの曝露量はADIに比べ数%程度であった。

 

 

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