心的外傷後ストレス症と海馬の新生!「あのせいで…」という思いがあるヒトは必見です。
「あのせいで…」
例外なく、誰もが幼少期から何度も何度も嫌な体験をしてきたことでしょう。しかし、その嫌な体験を今現在…
☑ 「あのせいで…」
そう、引きずっているヒトがいる一方で、
☑ 「あのおかげで…」(当初は、その体験で不快な感情を抱いていたのに…)
と、無事消化できるようになったヒトもいます。
果たして、この差はどこにあると思いますか?
心的外傷後ストレス症(PTSD)
「あのせいで…」(トラウマを抱えている)そういった思いを引きずっている状態は、PTSDととてもよく似ています。
心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stressdisorder:PTSD)は,生死にかかわるような自然災害や事故,暴力,または性被害などのトラウマ体験を経験した後,再体験(フラッシュバックや悪夢など),回避,過覚醒,認知・感情の否定的変化を主とする症状が出現し,社会生活に重大な支障をきたす精神疾患である。
・PTSDと炎症 堀 弘明 2026年 37 巻 1 号 26-31 より引用
そのPTSDの12カ月有病率は0.7%。ここがポイントですが、99%以上のヒトはPTSDから抜け出しているようです。
日本での PTSD の 12 ヵ月有病率は 0.7% と報告されており(世界精神保健調査日本調査 2016 年),成人人口をおおよそ 1 億人とした場合,約 70 万人にのぼることになる。
・PTSDの概略・診断・薬物療法 堀 弘明 2025年 38 巻 3-8 より引用
さて、ほとんどのヒトがPTSDから脱出している一方で、0.7%のヒトが12カ月経過しても苦しみ続けています。その差はどこにあるのでしょうか?
海馬は新生する!
脳には海馬(かいば)と呼ばれる、新しい記憶や学習をつかさどる重要な部位があります。また、海馬には歯状回という部位があり、ここはストレス反応や不安感の調節、およびうつ病などの感情障害と深い関わりを持ちます。
記憶の強化と扁桃体
脳には「快」「不快」という大雑把な感情評価をする扁桃体という部位があります。
トラウマ体験時、この扁桃体が強く興奮するであろうことは容易に想像できることでしょう。事実、強い恐怖や嬉しい出来事があると、扁桃体が激しく活動し、その興奮が歯状回や海馬全体に伝わるとことで神経回路のネットワークが強化されます。また、それにより記憶の形成が強化されます。
9.11のビル崩壊や3.11の津波など、扁桃体がとても強く興奮したからこそ私たちはあの映像記憶が脳に深く刻まれています。
海馬歯状回の新生
実は、海馬歯状回は、大人の脳でも新しい神経細胞が生まれる(神経が新生する)数少ない領域の一つです。
そりゃそうです。もし海馬歯状回がずっとそのままだったら、私たちの記憶は恐怖や不安な経験で満たされてしまいますから。逆に、新しい細胞が生まれるからこそ、嫌な経験をしてもそれを乗り越える(気持ちを切り替える)ことができます。
そんな海馬歯状回は精神的・身体的ストレスを受けると、神経新生や新生細胞の生存率が低下します。ならば、次のことが容易に想像できます。
☑ 神経の新生が快適に進めば、新たな情動体験(楽しい・嬉しい)経験を重ねることができる。したがって、気分・気持ちの切り替えができやすくなる。
☑ 神経の新生が滞る:新たな情動体験を重ねる(記憶)することができないため、強く刻まれた古い体験記憶がよりフラッシュバックして気持ちの切り替えが困難になる。
これらのことから、海馬歯状回で神経新生が快適に進めば新たな経験(記憶)が脳に刻まれ、よりPTSDから解放されやすくなる。そう、容易に想像できますし、現実にその通りのようです。
Kitamura らは,海馬の神経新生が低下したマウスでは恐怖記憶の海馬依存的な期間が長くなり,神経新生が活性化したマウスでは逆に短くなることを発見した。
・うつ病とPTSDに対するオメガ3系脂肪酸のエビデンス 西 大輔, 松岡 豊 2013年 25 巻 3 号 248-253 より引用
では、海馬の新生が低下する、その裏では何が起きているのか?確認しておきましょう。
トラウマ・PTSD と炎症
PTSD に免疫炎症系の異常がみられることを示す研究結果が近年相次いで報告されており、血液中の炎症性サイトカインが高値を呈することが見出されています。
炎症の亢進は PTSD 発症に先行するという研究結果も存在する。
炎症亢進は恐怖刺激に対する扁桃体の活性化を増大させるという報告や,動物モデルにおいて炎症亢進は恐怖記憶消去を阻害するという報告から,PTSD の再体験症状に炎症が関与する可能性が示唆される。
・PTSDと炎症 堀 弘明 2026年 37 巻 1 号 26-31 より引用
PTSDの発症に〝先行して″炎症の亢進がある。
この事実はとても重要です。そして、炎症の亢進させる原因と言えば…?
思い当たるのはアレですよね。
PTSD 患者は不健康な食生活習慣を有する傾向がある。
PTSD 患者の食事に関する調査研究において,果物の摂取量が少なく,アルコール,ファストフー
ド,炭酸飲料,トランス脂肪酸の摂取量が多いことが報告されている
・PTSDと炎症 堀 弘明 2026年 37 巻 1 号 26-31 より引用
そう、PTSD発症前、すでに食習慣により脳で炎症が生じていた。その炎症により、
☑ 炎症亢進は恐怖刺激に対する扁桃体の活性化を増大させる
☑ 炎症亢進は恐怖記憶消去を阻害する
そして、扁桃体を過剰に興奮させる原因の多くはリノール酸過剰摂取にあります。
だからこそ、災害時に届けられるのはコンビニのおにぎりや、あの大手パンメーカーのパン。コンビニのおにぎりは炊飯油入りで炊き上げられ、また、あのパンにはマーガリンがたっぷり入っています。さらに、どちらも添加物もたっぷり入っています。
したがって、これら非常食で配られる食材は添加物で扁桃体を刺激した上、リノール酸過剰摂取でさらに過剰興奮させることができます。つまり、PTSD発症を促す目的で配られているというのが本当のところでしょう。
【参考】記憶力向上 オメガ3系脂肪酸(出典:yomiDr.)
PTSD発症はリノール酸過剰摂取が原因なら、次のような解決策を誰もが氣づきますよね。
Matsuoka は「オメガ 3 系脂肪酸によって海馬の神経新生を活性化させると,海馬から早期に恐怖記憶が消失し,結果的に PTSD 症状が最小化する」という仮説を立てた。
・うつ病とPTSDに対するオメガ3系脂肪酸のエビデンス 西 大輔, 松岡 豊 2013年 25 巻 3 号 248-253 より引用
そして現実に、DHAやEPAの摂取により海馬の新生が活性化するという結果が得られています。
松岡らによって,n-3 系脂肪酸が PTSD の予防と症状緩和に寄与することが報告されている.n-3 系脂肪酸によって,海馬の神経新生が活性化されると,海馬における恐怖記憶が消失し,PTSD 症状が軽減するという仮説を基に,心的外傷患者 15 名を対象に 12 週間,n-3 系脂肪酸を 1.6 g/day(DHA 1.47 g + EPA 0.147 g)摂取させたオープン試験がある.
結果として,n-3 系脂肪酸の摂取は PTSD 症状を軽減させ,その機序に血清中の BDNF の増加が関与している可能性が示された.
・精神-神経疾患の発症とn-3系脂肪酸 徳山 尚吾, 中本 賀寿夫 2013年 39 巻 9 号 511-520 より引用
まとめ
☑ PTSDの発症に〝先行して″炎症の亢進がある。
このことから、PTSDを発症するヒトはリノール酸過剰摂取であることがわかります。そして…
☑ 炎症亢進は恐怖刺激に対する扁桃体の活性化を増大させる
☑ 炎症亢進は恐怖記憶消去を阻害する
炎症の亢進は扁桃体を活性化させますが、扁桃体は決して恐怖刺激に対してだけ活性化するわけではありません。
扁桃体は「快」「不快」と、大雑把な反応を促す部位です。
「山道を歩いていたら草むらから〝ガサガサ″という音が聞こえた」ら、誰もが足がすくむでしょう。この反応こそ扁桃体が活性化した結果ですが、お分かりいただきたいのがこの働きが〝危険を回避する″もの、つまり生き残る働きであることです。
ここを理解した上で以下を確認してください。
☑ 猫ににらまれたネズミ
これは恐ろしい相手を前にして恐怖で縮み上がり、どうすることもできなくなる状態のことです。そしてこれは先の「草むらから〝ガサガサ″という音が」という反応と同じ恐怖という情動を惹起しています。でも、猫とネズミの関係には次のようなたとえ話もあります。
☑ 窮鼠猫を噛む
追い詰められて逃げ場を失った弱い者でも、限界になれば反撃してくることがある。このたとえ話はそれを教えてくれます。
前者は「不安」「恐怖」、後者は「怒り」「イライラ」という情動ですが、扁桃体の活性化は闘争と逃走の情動を惹起することが解ります。
ならば、もうお分かりですね。
パワハラやモラハラ、DV、非行、犯罪、喧嘩(夫婦や親子、兄弟、他人との)、煽り運転、精神疾患(うつ病や不安症、パニック障害、統合失調症など)、虐待、育児放棄…
つい先日も「父親が1歳児に暴行」という報道がありましたが、昨今、社会問題として取り上げ続けられてきた一見「人格」や「性格」に問題があって起きたかのように思える報道の多くにリノール酸過剰摂取が隠れている。
この事実に氣づき、食生活を改善されることを強く強くお勧めします。
10日間チャレンジは、ほとんどのヒトが今すぐ生活に取り入れるべき生活習慣である。私は、そう確信していることを最後にお伝えします。


